市場調査部レポート

2016/04/01 13:12米雇用統計後に景況感は変化するか

【概観】 米雇用統計後に景況感は変化するか

今週(3/25-)は、ドルが全面安。円もドル以外の主要通貨に対して下落しており、リスク回避の後退が続いていることが示されました。ドル安の背景には、イエレン米FRB議長が講演で、利上げに慎重な見方を表明したことがありました。

もっとも、Bloombergが算出する米景気サプライズ指数は、2015年初の水準まで上昇しており、市場予想を上回る(ポジティブ・サプライズの)経済指標の発表が増えていることを示しています。3月の米雇用統計やISM製造業景況指数(4月1日発表、本稿執筆時点で未発表)、あるいはその後の経済指標を受けて、米景況感がどう変化するか、大いに注目されます。

景況感が一段と改善して、年内2回、あるいはそれを上回る回数の利上げが市場に織り込まれるならば、ドルはサポートされそうです。



他方、4月1日に日銀が発表した短観3月調査では、大企業の景況感が大幅に悪化しました。大企業製造業の景況判断指数が12月調査の12から6へと6ポイントの低下、同非製造業も25から22へ低下しました。

日銀短観の結果は、4月27-28日に開催される金融政策決定会合や、安倍政権の消費増税の判断にも影響を与える可能性がありそうです。

来週は、2月の製造業受注、3月のISM非製造業景況指数などの米経済指標が発表されます。すでに発表されている耐久財受注は、航空機を主因に前月から減少しました。これに非耐久財を加えた製造業受注も軟調が予想されます。ISM非製造業景況指数は2010年から50超が続いており、サービス業の底堅さを示しています。ただ、1月分が前月から大幅に低下したことが、2月の利上げ観測の後退やドル安をもたらしたことは記憶に新しいところです。2月分も1月からほぼ横ばいでした。3月は株価や原油価格の反発を受けて、ある程度盛り返すでしょうか。

3月15-16日に開催されたFOMCの議事録が公表されます。利上げを主張した投票メンバーはカンザスシティ連銀のジョージ総裁だけでしたが、利上げの是非を巡ってどのような議論がなされたのか、興味深いところです。

米国以外では、3月のトルコのCPIの発表や、RBA(豪州中銀)の会合が予定されています。TCMB(トルコ中銀)は3月24日の会合で、政策関連金利の一部を引き下げました。インフレ率が鈍化して、そうした政策変更が事後的に正当化されるかどうか。RBAの会合では現状維持が予想されます。ただ、追加利下げに関してどのような見解が表明されるか、要注目です。<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 広がる!? FOMC内部の温度差

3月29日にNYで行われた講演で、イエレン米FRB議長は、「利上げを慎重に進めるのが適切だ」とし、現状では、「この慎重姿勢は特に正当化される」と強調しました。そして、議長は景気に対する二つのリスクを挙げました。一つは、中国経済の減速であり、外需主導から内需主導への構造転換が上手くいくか不透明だとしました。もう一つは、資源価格の動向で、とくに原油価格の一段の下落は世界経済に悪影響がでると指摘しました。

もっとも、地区連銀総裁を中心に、利上げに前向きなFOMCメンバーが増えているのも事実でしょう。利上げに慎重な「ハト派」の代表格と目されてきたシカゴ連銀のエバンス総裁も、「利上げペースは極めて緩慢に」としつつも、年内2回の利上げは妥当との見解を表明しています。

最近の発言から、エバンス総裁を含めて5人の地区連銀総裁が利上げに比較的前向きとみられます。3月FOMCで利上げを主張したジョージ総裁を加えれば、全12地区の半分の総裁が利上げに前向きということになります。ワシントン本部の理事は総じて利上げに慎重ですが、フィッシャー副議長は前向きと言えそうです。4月の利上げの可能性は低いとみられますが、今後の景況次第では6月の利上げ観測が高まるかもしれません。<西田>


【ユーロ】 来週のユーロ/米ドルの上値・下値節目は!?

今週はユーロ圏で目立った指標発表がなく、ECBメンバーからの発言も聞かれないなど、ユーロ側からの材料が乏しい一週間となりました。

FRB高官から相次いで追加利上げに前向きな発言が聞かれたことで「ユーロ安・米ドル高」に傾いた先々週のユーロ/米ドル相場は、「ハト派」的なイエレンFRB議長の講演で一気に「ユーロ高・米ドル安」へと戻し、3月31日には一時1.1409ドルと、昨年10月15日以来の1.14ドル超えとなりました。

仮に3月の米雇用統計の結果が市場予想を上回り(本稿執筆時点で未発表)、米追加利上げ観測が高まれば足もとのユーロ高に水を差す形になりそうです。もしも、ユーロ/米ドルが下落するとすれば、週足ボリンジャーバンド(周期26週)の26週線(4/1時点、1.1ドル)や、週足一目均衡表の基準線(同)などが下値節目と目されます。

逆に、ユーロ/米ドルが上昇するとすれば、昨年10月高値(約1.15ドル)や週足一目均衡表の先行スパン上限(4/1時点、1.1671ドル)が上値節目として意識されるでしょう。<シニアアナリスト 山岸永幸>

【ユーロ/米ドル(週足、一目均衡表) 2015/8/2 – 2016/4/1】  

出所: FX Chart Square


【ポンド】 ベルギーのテロはBrexitに影響せず!?

Brexit(ブレグジット、英国のEU離脱)問題の行方に関連して、3月22日に起きたベルギーのテロ事件の影響が懸念されていました。テロ事件の直後は、同事件を巡りEU離脱派が増加するとの観測の高まりから、市場ではポンドの下落ピッチが速まる場面もみられました。

しかし、英FT紙による直近の世論調査7件の平均値では、残留支持46%、離脱支持40%と、EU残留派が離脱派を上回っており、テロ発生後の世論調査でも、残留支持が離脱支持を上回っています。また、20代、30代の若年層の3分の2が残留派と言われ、国民投票当日の投票率が通常の地方選挙と同じ30%程度なら離脱派有利、60%を超えれば残留派有利との指摘もあります。

BOE(イングランド銀行)は29日、「Brexitの不確実性がポンドのさらなる下落圧力となる可能性」「金融安定の見通しは11月から悪化している」などの見解を示していますが、EU離脱派に対するネガティブ・キャンペーンがジワジワと世論に効いているのかもしれません。

来週は8日に鉱工業生産や貿易収支の発表が行われますが、注目度は低く、ポンド相場の材料となりにくいと推測されます。<山岸>


【豪ドル】 米ドルに左右される展開か。対円は200日移動平均線がポイント

豪ドルは今週、対米ドルで約9か月、対円で約3か月ぶりの高値をつけました。豪州の経済指標が堅調なことや、イエレンFRB(米連邦準備理事会)議長の講演を受けて米ドル安が進行したことが、豪ドルの上昇の背景として挙げられます。

来週火曜日(5日)に、RBA(豪中銀)が政策金利を発表しますが、現行の2.00%に据え置かれそうです。声明では、必要な場合に追加利下げを実施するとの姿勢が改めて示されるとみられます。RBAの政策金利発表は相場材料になりにくいかもしれません。

来週の豪ドルは引き続き、米ドルに左右される展開になりそうです。豪ドル/円は200日移動平均線にいったん上値を抑えられた格好です。NY終値で200日移動平均線を上回れば、テクニカル的にさらに上を目指す展開となる可能性があります。2015年12月31日高値の88.19円に向かうかもしれません。<アナリスト 八代和也>

豪ドル/円(日足、2015/10/1-)

出所:M2J FX Chart Square


【NZドル】 対円は上値が重くなる可能性も!?

NZドル/円は今週、一時78.14円へと上昇し、今年2月5日以来の高値をつけました。

クロス円であるNZドル/円は、NZドル/米ドルと米ドル/円の影響を受けます。ここ数日のNZドル/円の上昇は、NZドル/米ドルの上昇に支えられた面が大きいと考えられます。

3月29日のイエレンFRB議長の講演を受けて、米ドル安が進行しました。米ドル/円は下落したものの、NZドル/米ドルがそれ以上に上昇したことで、NZドル/円は上昇しました。

市場の関心がFRBの次回利上げ時期に向きつつあることから、為替市場は米ドル主導の相場展開が続く可能性があります。NZドル/円は引き続き、NZドル/米ドルと米ドル/円に左右されて主体性のない動きになるかもしれません。

一方、テクニカル面でみると、NZドル/円は78円付近に位置する90日移動平均線にいったん上値を抑えられた格好です。78-79円には、90日、120日、200日の各移動平均線が位置しており、重要なテクニカルポイントが集中しています。そのため、78円台では、利益確定売り圧力が強まることが考えられます。90日、120日、200日の各移動平均線は、それぞれ78.01円、78.70円、79.10円に位置します(3月31日時点)。<八代>

NZドル/円(日足、2015/10/1-)

出所:M2J FX Chart Square


【トルコリラ】 4日発表の3月CPIが注目材料

4日にトルコの3月CPI(消費者物価指数)が発表されます。2月のCPIは前年比+8.78%と、TCMB(トルコ中銀)のインフレ目標(+5%、±2%が許容範囲)を大幅に上回ったものの、2014年5月以来の高い伸びを記録した1月の+9.58%から上昇率が鈍化しました。

インフレを抑制するため、TCMBは短期市場金利を高めに誘導。短期市場金利(翌日物銀行間金利)は、上限である翌日物貸出金利を超える状態が続いています。

TCMBは3月24日の政策会合で、世界の金融市場のボラティリティ低下を理由に、3つの政策金利を最終的に一本化する「単純化」措置を開始。主要政策金利である1週間物レポ金利を7.50%、翌日物借入金利を7.25%に据え置く一方、翌日物貸出金利を10.75%から0.25%引き下げ、10.50%とすることを決定しました。

金融市場が落ち着いた状態が続けば、TCMBは今後も小幅ずつ単純化措置を進めるとみられます。インフレ圧力の鈍化が示されれば、単純化措置が進めやすくなるかもしれません。3月のCPIの市場予想は前年比+8.20%。上昇率は2月から一段と鈍化するとみられます。

最近のトルコリラは、米ドルに左右される状態になっており、その状況は来週も続く可能性があります。ただし、CPIが市場予想を下回った場合、次回4月20日の政策会合で、3月と同様に翌日物貸出金利を引き下げるとの観測が広がるかもしれません。その場合、トルコリラの重石となりそうです。<八代>


出所:Bloombergより作成




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