市場調査部レポート

2016/03/18 12:25日米イベント通過後も、弱いドルの地合い

【概観】 日米イベント通過後も、弱いドルの地合い

今週(3/11-)は、円がほぼ全面高の展開でした。日銀の金融政策決定会合と米FOMCとで、いずれも現状維持が決定されたことや、FOMC参加者の政策金利見通しが下方修正されたことなどから金融政策の方向性の差が明確にならず、ドル売り円買いにつながったものとみられます。

ドル円は2月11日の安値(110.96円)を更新しました(3/17の110.67円)。そして、先週も指摘した通り、ドル実効レートの軟調が一層目立ちます。ドル実効レートは今年1月下旬まで上昇基調が続いたことで、FRBを含む米当局からドル高を懸念することが高まっており、その調整が入っている可能性があります。また、大統領予備選で、過激発言が目立つトランプ氏だけでなく、他の候補もTPP反対など国際社会に配慮しない内向きの姿勢を強めていることが、ドルの重石になっているかもしれません。

米国とその他の国の金融政策の方向の差が鮮明となり、市場がそれに注目するようになるまで、ドルの低迷は続くかもしれません。ドル円は、2014年10月31日の日銀の量的・質的緩和第2弾、いわゆる「ハロウィーン緩和」の日に109円台前半から112円台へ、そして週明け11月3日に114円台へと一気に上昇しました。テクニカル的には、109円-114円は「真空地帯」であり、ほとんど「抵抗」や「サポート」はありません。「109円」を意識しておく必要がありそうです。



来週は、米国の耐久財受注や日本の消費者物価(いずれも2月分)が注目されます。耐久財受注は1月に航空機の急増によって押し上げられた面が強く、2月はその反動が出そうです。だとすれば、ドル安要因となりそうです。一方、日本の消費者物価はガソリン価格の低下も手伝って、総合指数と、生鮮食品を除くコア指数はマイナスになる可能性があります。日銀の物価目標達成が一段と遠のくとの見方が強まれば、4月以降の追加緩和期待が強まることで、円安材料になるかもしれません。

また、TCMB(トルコ中銀)の会合も予定されています。17日、SARB(南アフリカ中銀)がランド安を背景にサプライズの利上げに踏み切りましたが、リラは比較的堅調を維持しているため、TCMBが利上げに踏み切るインセンティブに乏しそうです。課題となっている政策金利の一本化は、4月以降に次期総裁の手に委ねられるのかもしれません。<チーフアナリスト 西田明弘>


【米ドル】 FOMCは年2回の利上げを想定、12月から下方修正

16日、FOMCは金融政策の現状維持を決定しました。ただし、FOMC参加者の政策金利見通しが下方修正されたことで、市場は「FOMCはハト派度を高めた」と解釈したようです。

声明文は、「グローバルな経済や金融市場の動向にもかかわらず、米景気は緩やかなペースで拡大している」との判断を示す一方で、「グローバルな経済や金融市場の動向はリスクとなり続けている」とも指摘しました。

また、「インフレはここ数か月で加速している」としながらも、「2%の目標を下回っている」としました。イエレン議長は会見で、インフレの加速は一部の項目が大きく上昇したためであり、物価は不安定との見解を表明しました。

17人のFOMC参加者のうち、9人が今年中に2回の利上げを想定しました(1人が1回、3人が3回、4人が4回)。昨年12月時点では中央値として、7人が4回の利上げを想定していました。2回の利上げであれば、6月と12月となるかもしれません。

一方、17日時点の政策金利先物によれば、利上げの確率が5割を超えるのは9月以降です。年内1回の確率が42%、据え置きが31%、複数回が27%です。





今後の経済情勢によって、FOMCの判断が市場の見方に近づくのであれば、ドルは一段と下落するかもしれません。逆に、市場の見方がFOMCの見通しに近づくのであれば、ドルは反発する可能性があります。<西田>


【ユーロ】 米利上げピッチ低下観測でユーロ/米ドルのレンジに変化も

ECBによる大幅な追加緩和が行われた10日以降、ユーロ/米ドルは上値を切り下げる推移が続きましたが、米FOMCで利上げピッチの低下観測が高まったことで、16日には4営業日ぶりに高値を更新しました。

今年3月以降、ユーロ/米ドルの週足ボリンジャーバンド(周期26週)のプラス1σ(シグマ)が上値抵抗線となる推移が続いていました。しかし、日本時間18日午前9時半時点では同線を大きく上回っています。NY市場終値で同線を上回ると、昨年10月中旬以来の出来事となります。

今年1月下旬から先週まで、「26週線を中心に、プラスマイナス1σ」というレンジ推移となっていたユーロ/米ドルは、26週線(18日9時半時点で約1.1ドル)が下限、上限はプラス1σとプラス2σの中間あたり(同、約1.13ドル)またはプラス2σ(同、約1.14ドル)へと、レンジの水準が上がる形になるのかもしれません。<シニアアナリスト 山岸永幸>

【ユーロ/米ドル(週足) 2015/7/5 – 2016/3/18】  

出所: FX Chart Square


【ポンド】 Brexit(ブレグジット)が英国の政策にも影響

英国政府は16日、2016年度(16年4月1日から17年3月31日)の予算案を発表。この中で、2016年の成長率予想を従来の2.4%から2.0%に下方修正しました。景気減速への対処として法人税の段階的引き下げ、資産譲渡益の税率変更、中小企業向けの無税枠の拡大などの刺激策を盛り込みました。

EU残留・離脱を問う6月の国民投票が、キャメロン政権の不信任に繋がる事態を避けたいとの意向が働いたという見方もあり、Brexit(ブレグジット、英国のEU離脱)を巡る問題が政策にも影響を与えています。

17日にBOE(英中銀)は政策金利の据え置きを決定。EU離脱を巡る国民投票を6月に控えて不透明感が漂っていること、成長鈍化懸念によってポンドが打撃を受けたとの認識を示しました。一方、政策金利が今後3年で上昇する公算が大きく、利上げ開始後は緩やかなペースになるとの見方を示しました。

北海ブレント先物は直近17日には41.54ドルと、昨年12月4日以来の水準に上昇しました。今月7日以降、40ドル前後での動きが続いており、原油価格と連動性が高いポンドにも反映されているようです。Brexit問題が尾を引く展開に変わりはないものの、ポンド/円は戻りを試す動きになるかもしれません。
<山岸>


【豪ドル】 引き続き堅調な展開を予想

17日に発表された豪州の2月雇用統計は、失業率が5.8%と1月の6.0%から改善。雇用者数が前月比300人増と、2か月ぶりに増加しました。

雇用者数は、1月分が0.79万人減から0.74万人減へと若干上方修正。2月分の内訳をみると、パートタイム就業者が1.56万人減少した一方、フルタイム就業者が1.59万人増加しました。

雇用者数は11月に、2000年7月以来の大幅増を記録するなど、昨年10-12月期に力強い伸びを示しました。1月は前月比減、2月は小幅増と、ここ2か月は雇用が伸び悩んでいますが、10-12月期の反動とみることもできそうです。

RBA(豪中銀)は政策金利の据え置きを続けており、その背景に「労働市場の改善」があります。3月1日の会合時の声明では、国内の労働市場や世界の金融市場の動向を注視するとしたうえで、景気支援のために必要ならば、追加利下げを実施するとの姿勢が示されました。

今回の雇用統計で、失業率が改善し、雇用者数もそれほど悪くない結果となったことで、RBAが追加利下げを実施する必要性は低下したとみられます。政策金利は当面、現在の2.00%に据え置かれそうです。

RBNZ(NZ中銀)は10日の会合で利上げを決定し、さらに近い将来に追加利下げに踏み切るとの観測あります。一方で、RBAが政策を当面据え置くとみられることは、豪ドルの支援材料となりそうです。原油など資源価格の上昇も、資源国通貨である豪ドルにとってプラスです。豪ドルは引き続き堅調な展開が予想されます。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 乳製品価格が再び下落、NZドルの重石か

乳製品電子オークション(GDT)が15日に開催され、乳製品国際価格の指標であるGDT価格指数は628と、前回1日の646から低下、昨年8月以来の低水準となりました。

EU(欧州連合)の生乳生産割当制度(*)廃止による生産量増加や、中国やロシアの輸入低迷などにより、乳製品価格は下落傾向にあります。

*生乳生産割当制度・・・EUが域内の生乳や乳製品の過剰生産の抑制や乳価維持を目的に、加盟国ごとに生乳生産量の上限を定めた制度。2015年3月末で廃止。

乳製品はNZ最大の輸出品です(輸出全体の約3割を占める)。その価格動向はNZ経済に影響を与え、RBNZ(NZ準備銀行)も注視しています。昨年実施された4回の利下げは、乳製品価格の下落による国内の経済見通しの悪化が一因でした。そのため、乳製品価格の下落は、先々の追加利下げにつながる可能性があります。NZドルの上値を抑える材料になりそうです。<八代>


【トルコリラ】 24日の会合では政策金利の据え置きを決定か

24日(木)にTCMB(トルコ中銀)が政策金利を発表します。前回2月の会合では、政策金利を7.50%、翌日物借入金利を7.25%、翌日物貸出金利を10.75%に据え置きました。

トルコの2月のCPI(消費者物価指数)は前年比+8.78%と、TCMBの目標(前年比+5%、±2%が許容範囲)を大幅に上回りました。ただ、2014年5月以来の高い伸びを記録した1月の+9.58%から鈍化しました。加えて、前回会合以降、対米ドルでのトルコリラ安は一服。さらに、バシュチュ総裁は4月19日に任期満了となり、任期切れ直前の金融政策の変更には慎重になるとみられます。

そのため、24日の会合では政策金利の据え置きが決定されそうです。

市場では、据え置きとの見方が大勢です。据え置きの場合、トルコリラに大きな反応はみられないかもしれません。<八代>


出所:Bloombergより作成


【南アランド】 SARBが利上げ決定、追加観測がランドの下支え要因になりそう

SARB(南ア中銀)は17日の政策会合で、政策金利を6.75%から0.25%引き上げ、7.00%とすることを決定しました。利上げは3会合連続です。

干ばつによる食料品価格の上昇や、ランド安により、南アフリカではインフレ圧力が高まっており、1月のCPI(消費者物価指数)は前年比+6.2%と、2014年8月以来の強い伸びを記録、SARBのインフレ目標(+3から6%)の上限である+6%を上回りました。

10-12月期のGDP成長率は前年比+0.6%と、7-9月期の+1.0%から減速、過去6年間でもっとも低い伸びを記録しました。

経済が減速するなかで、SARBはインフレ対応を優先した格好です。会合では6人の政策メンバーのうち、3人が据え置き、3人が0.25%の利上げを主張して意見が割れ、最終的に利上げが決定されました。

クガニャゴ総裁は会合後の会見で、CPIに上振れリスクがあると指摘。CPIへのリスクとして、食料品価格とランドを挙げ、CPIが目標圏内に戻るのは2017年7-9月期になるとの見通しを示しました。

政策メンバーのカシム氏は、「SARBは利上げ局面にある」と明言し、追加利上げを示唆する一方、「毎回、利上げを行うことを意味するわけではない」と述べました。利上げは経済データ次第ということでしょう。

今回の利上げ後も、市場では追加利上げ観測が残るとみられます。このことは、ランドの下支え要因となりそうです。<八代>


出所:Bloombergより作成




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