市場調査部レポート

2016/03/04 13:45米利上げ観測再浮上がドルのサポート要因!?

【概観】 米大統領候補のドル高けん制に注意

米利上げ観測の再浮上、ECBの追加緩和の可能性(日銀も?)、英国のEU離脱に関する国民投票の接近、VIX「恐怖」指数20割れが示すリスク回避の後退による円売り戻しの可能性など、ドル高をもたらしそうな要因は散見されます。一方で、米国内からのドル高けん制には注意が必要かもしれません。

米大統領予備選では、民主党のクリントン氏と共和党のトランプ氏がともに15州のうち10州で勝利し、党指名の獲得に向けて大きく前進しました。とりわけ、クリントン氏は今後のスケジュールや予備選の方式を考慮すると、党指名をほぼ確実にしたといえるかもしれません。

(3日4日付けスポットコメント「トランプ氏より党指名獲得に近いクリントン氏」をご参照↓
http://www.m2j.co.jp/market/express_report2.php?id=2176

クリントン氏は2月下旬に新聞等に寄稿して、中国、日本、アジアの国々を意図的に通貨安にしている為替操作国と非難しました。その上で、そうした不公正貿易を是正すべく戦い続けると宣言しました。

トランプ氏も、為替相場には触れていないようですが、出馬宣言時に中国や日本(とメキシコ)を不公正貿易の相手国として名指しで批判しています。

それら候補の発言は有権者向けリップサービスの面もあるでしょうが、次期大統領となりうる人物の発言だけに、今後さらに踏み込んだ発言が相場材料になる可能性に注意は必要でしょう。

来週から再来週にかけて、主要中銀の政策決定会合が続きます。来週は、9日にBOC(カナダ中銀)10日にRBNZ(NZ中銀)とECBの会合です。原油価格が反発していることもあり、BOCは現状維持となりそうです。RBNZも現状維持の予想が有力ですが、乳製品価格の下落もあって、追加緩和期待は根強く残りそうです。ECBは預金金利のマイナス幅拡大など、何らかの追加緩和の可能性がありますが、その場合に市場がユーロ安で反応するかどうかは微妙なところでしょう。<チーフアナリスト 西田明弘>


【米ドル】 米利上げ観測再浮上がドルのサポート要因!?

ベージュブック(地区連銀経済報告)では、「景気はほとんどの地区で拡大した」と総括されました。ただし、具体的には、「拡大」を報告したのは12地区のうち7地区だけでした。2地区が「まちまち」、2地区が「横ばい」、1地区が「縮小」と報告しました。製造業は「横ばい」とされ、とりわけ「ドル高と世界経済見通しの悪化が輸出に悪影響を与えた」と指摘されました。

一方で、雇用は「引き続き堅調」でした。賃金は「総じて増加」とされ、「力強い」賃金上昇を報告した地区もありました。7地区で熟練労働者の賃金上昇が報告され、そのうちの4地区を含む5地区で低熟練や入門レベルの賃金上昇が報告されました。

ベージュブックの景況判断は必ずしも力強いものではありませんでした。それでも、景気サプライズ指数によれば、足元で市場予想を上回る経済指標が増えています(図)。また、CPI(消費者物価)やPCE(個人消費支出)などの物価は、エネルギーと食料を除くコアが前年比でジリジリと上昇を続けています。雇用の堅調を背景とした賃金上昇圧力が、サービス価格の上昇を通じて物価全般を押し上げている可能性が考えられます。



そうした状況下で、大きく後退していた利上げ観測が再び高まっています。政策金利(FFレート)先物に基づけば、2月上旬に一時8割を超えた「年内利上げなし(据え置き)」の確率が3月3日時点で4割弱に低下しています(=市場のメインシナリオが「年内利上げあり」に変化)。いまのところ「年内利上げ1回」の見方が有力ですが、「年内利上げ2回以上」の確率が一段と上昇するようであれば、ドルのサポート要因となりそうです。<西田>


【ユーロ】 3月理事会での追加緩和の是非は!?

ドラギECB総裁は1日、「ユーロ圏の成長、インフレ見通しは弱まっており、3月の理事会で経済見通しの悪化を考慮する必要がある」との認識を示し、必要なら行動することをためらわないとしました。

これ自体は、前回1月の理事会終了後に述べた「3月に政策スタンスを再考する可能性がある」との発言に沿った内容で、大きな変化はありません。市場では、3月10日の理事会での中銀預金金利の引き下げ、資産買い入れ枠の拡大などの追加緩和策が決定されるとの見方があります。

一方、一部のECB理事からは、低いインフレ率を高めるために追加緩和に頼ることに懸念を表明したり、追加緩和に対する市場の強い期待に、けん制発言を行った例がみられます。

10日の理事会で市場が期待するような内容の追加緩和が行われない場合には、ユーロ/米ドルは、昨年1月中旬以降の上値節目となっている1.15ドルを超える動きとなるかもしれません。

反面、期待どおりの追加緩和が行われたとすると、4月または6月の理事会での追加緩和観測が高まり、ユーロ/米ドルは1.05ドル程度まで下落するかもしれません。<シニアアナリスト 山岸永幸>


【ポンド】 EU残留支持派のネガティブ・キャンペーンが奏功か!?

ハモンド英外相は2日、王立国際問題研究所での講演で「英国がEU離脱を決めた場合、EUとの新たな貿易協定が速やかにまとまる保証はなく、EUにとどまることが英国の利益になる」と訴えました。

6月の国民投票でEU離脱が決定された場合、EUが延長を認めない限り2年間で自動的に英国はEUを離脱しますが、その間に貿易協定がまとまるとは限らず、自国企業だけでなく、英国を拠点とする海外企業の先行きが示せないと、同氏は指摘しました。

英国の主張が概ね認められた先日のユーロサミット(ユーロ圏首脳会議)終了以降、キャメロン英首相ほか英政府内のEU残留支持派は「EU離脱は英国の利益とはならない」というネガティブ・キャンペーン(対立候補のイメージを落とすような宣伝、広告)を盛んに行っています。オズボーン英財務相も先月27日、「英国がEUからから離脱すれば世界経済への打撃になるとの見解でG20が一致した」と述べました。

英国がEUを離脱した場合、英GDPは徐々に減少するとの民間調査機関の予測があるほか、シティ(英金融街)の空洞化懸念など、デメリットが多いというのがEU残留支持派の主張です。

最新の世論調査では、55%がEU離脱を懸念しているという結果で、EU残留支持派のネガティブ・キャンペーンが功を奏したようです。同問題を巡り大きく揺れるポンドも、残留支持派の優勢で一旦は落ち着きを取り戻すかもしれません。<山岸>


【カナダドル】 3月は政策金利据え置きか!?

BOC(カナダ中銀)は3月9日に政策金利を発表します。足もとのWTI原油先物が30ドル台で安定推移していることや、レーンBOC副総裁が政策スタンス変更に前向きでない発言を行っていることから、今回は政策据え置きが決定される可能性が高いと推測されます。BOCは2015年7月以降、政策金利を0.50%に据え置いています。<山岸>


【豪ドル】 利下げ観測後退や鉄鉱石価格上昇に支えられ、一段高も

豪ドルは3日に、対米ドルで昨年12月4日、対円で今年2月5日以来の高値をつけました。世界の株価や原油価格の反発を背景としたリスク回避の緩和、堅調な経済指標を受けてのRBA(豪中銀)の利下げ観測の後退鉄鉱石価格の反発が、豪ドルの支援材料となっています。

2日に発表された豪州の10-12月期GDPは前期比+0.6%、前年比+3.0%と、市場予想の+0.4%、+2.5%を上回りました。前期比で19四半期連続のプラスを記録、前年比で2014年1-3月期以来の高い伸びでした。また、AIG製造業PMIは昨年7月以降、景況判断の分かれ目である「50」を上回り続けており、2月は53.5と1月の51.5から上昇、2010年7月以来の高水準となりました。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、次回4月の会合で政策金利が現在の2.00%に据え置かれる確率を87.3%、利下げの確率を12.7%織り込まれています(3日時点)。据え置きの確率は5月の会合までで52.3%、6月の会合までで54.2%へと低下するものの、それでも50%を超えており、市場のメインシナリオは少なくとも6月まで政策金利据え置きであることが確認できます。2月25日時点では、6月まで据え置きの確率が35.0%、利下げの確率が65.0%でした。

鉄鉱石価格は昨年12月半ばに約10年ぶりの安値を記録したものの、その後、価格下落による中国の輸入増などを要因に上昇へと転じ、足もとで約4か月ぶりの高値水準まで回復してきました。

RBNZ(NZ中銀)が近い将来に追加緩和に踏み切るとの観測がある一方、RBAは政策を当面据え置くとみられること、そして最大の輸出品である鉄鉱石の価格が上昇傾向にあることは、引き続き豪ドルの支援材料となりそうです。豪ドルは対円、対米ドルで一段高となる可能性があります。<アナリスト 八代和也>


出所:Bloombergより作成


【NZドル】 10日のRBNZ政策金利発表に注目

10日(木)にRBNZ(NZ中銀)が政策金利を発表します。RBNZは政策金利の据え置きを決定した1月の会合の声明で、「今後1年間に若干の追加利下げが必要になる可能性がある」と表明。ウィーラー総裁は、2月3日の講演で、改めて追加利下げに言及する一方、目標を下回るCPI(消費者物価指数)については、原油安が低インフレの原因と指摘し、追加利下げを急がない姿勢を示しました。

ただ、NZの経済指標は弱めです。RBNZが企業経営者を対象に実施した四半期ごとのインフレ期待調査では、今後1年間のインフレ率予想が1987年の調査開始以来最低を記録。今後2年間のインフレ率予想も1994年4-6月期以来の低水準となりました。また、2月のANZ企業景況感調査が5か月ぶりに悪化。1月の23から7.1へと低下しました。GDT価格指数(乳製品価格)は4日のオークションで前回から若干上昇した(638から646へ)ものの、依然として昨年8月以来の低水準です。

経済指標をみれば、10日の会合で追加利下げが決定されてもおかしくない状況と言えそうです。ただ、RBNZの現在の政策金利は過去最低です。今後状況が悪化した場合に備え、RBNZは利下げ余地をできるだけ残したいとみられます。10日の会合では、政策金利を据え置く可能性の方が高いと考えられます。

市場では、10日の会合で政策金利が2.50%に据え置かれるとの見方が有力ですが、経済指標が弱いこといから0.25%の追加利下げに踏み切るとの見方もあります。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、10日にRBNZが政策金利を据え置く確率を67.7%、0.25%の利下げを行う確率を32.3%織り込んでいます(3日時点)。見方がやや分かれているだけに、NZドルは政策金利が据え置かれれば上昇、利下げが決定されれば下落というように、結果に素直に反応するかもしれません。<八代>


【トルコリラ】 対円はNY終値で39円台に乗せられるか!?

3日に発表されたトルコの2月CPI(消費者物価指数)は前年比+8.78%と、2014年5月以来の高い伸びを記録した1月の+9.58%から鈍化。一方、エネルギーと食品を除いたコアCPIは+9.72%と1月の+9.63%から若干上昇、2014年7月以来の高い伸びとなりました。ただ、CPIの結果に対し、為替市場に大きな反応はみられませんでした。

来週のトルコの経済指標は、8日(火)に1月鉱工業生産、10日に1月経常収支が発表されますが、手がかり材料としては力不足かもしれません。トルコリラは外部要因に左右される展開となりそうです。

トルコリラ/円は2月11日以降、おおむね37円台半ばから39円のレンジで推移してきました。現在はレンジ上限近辺(4日11時時点)にありますが、NY終値ベースで39円台にしっかり乗せてくるようであれば、3週間近くにわたるレンジ相場が終わる可能性があります。その場合、43.51円(11月20、23日高値)と41.05円(2月1日高値)を結んだ下降トレンドラインが、戻りの目安となりそうです。下降トレンドラインは、4日時点で39.90円近辺に位置しています。<八代>


出所:M2J FX Chart Squareより作成





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