市場調査部レポート

2016/02/12 13:47ドル円は政策対応が求められる水準?

【概観】 ドル円は政策対応が求められる水準?

10-11日のイエレンFRB議長の議会証言を受けて、ドル円が大きく下落しました。ただ、ドルの実効レートは2月4日の安値をわずかに下回っているだけです。一方で、ドル円は一時111円前後まで下落、4日の安値(116.50円)を大きく下回ってきました。

2月に入って、通貨の騰落率をみると、円の全面高であり、ドルの全面安です。ただ、円の次に強かったユーロでも対円では3%近く下落しており、今局面は「ドル安」より「円高」の度合いが強いように思われます。



円の実効レートは2014年8月以来の水準まで上昇しています。つまり、為替レートに限定すれば、日銀のマイナス金利導入だけでなく、黒田バズーカ第2弾(ハロウィーン緩和)の効果も消滅したことになります(ドル円でみれば110円割れがバズーカ第2弾前の水準です)。



これ以上の「円高」は日本経済に打撃となる可能性が高まるでしょう。ある証券アナリストによれば「(一部の輸出企業は)115円までの円高は耐えられるが、それ以上の円高になれば業績はかなり厳しい」とのことでした。ある為替ストラテジストはマイナス金利導入直後に「すぐに次があるかもしれない」と語っていました。その可能性は高まっていそうです。

安倍政権が消費税増税を先送りするとの憶測も囁かれはじめています。さすがにすぐに介入というわけではないでしょうが、日本サイドに何らかの対応が必要な「円高」になりつつあるように思われます。

来週はまず、春節明けの上海株式市場がどう再開するか。株価が急落するようであれば、世界的な株安のスパイラルが続くかもしれません。米国の経済指標は1月の鉱工業生産など製造業関連が中心であり、引き続き低迷が予想されます。FOMC議事録も公表されますが、今週イエレン議長が最新の状況について判断を示しているので、新味はないかもしれません。日本の10-12月期GDPは2四半期ぶりのマイナスが予想されており、その通りの結果となれば、2017年4月の消費税再増税の先送りの議論が浮上するかもしれません。<チーフアナリスト 西田明弘>


【米ドル】 米利下げ・マイナス金利観測は時期尚早か

10-11日の議会証言で、イエレン議長は「(昨年12月の利上げ以降、)多くのことが起こった」と認め、「株価の下落、ジャンク債の利回り上昇、ドル高などの金融情勢は、従来に比べて経済成長をサポートしにくくなっている。そうした状況が続くなら、経済見通しを悪化させるだろう」と語りました。

イエレン議長は追加利上げに慎重な姿勢を強調する一方で、「次の一手が利下げとなるような経済停滞の可能性が高いと考えたことはない。利下げの可能性が極めて高くなるほどの経済見通しの変更はまだ起きていない」とも語りました。

また、議長は、議員からの質問に答えて「2010年にマイナス金利を検討したが、あまり効果はないと判断した」と回答。そのうえで、「他国での導入実績を踏まえて、再度検討している」と認めました。ただ、これは導入の是非の検討ではなく、あくまでも技術的な検討の域を出ていないとみられます。

なお、11月時点の政策金利(FFレート)先物に基づいた確率は、年内据え置きが85%、利上げが11%、利下げが4%となっています。<西田>


【ユーロ】 低いインフレ率とユーロ圏内の景況感格差が重石に

ECB理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁は、3月のECB理事会ではインフレが議題になるとし「今年のインフレ率見通しは大幅に引き下げられる必要があるだろう」と述べました。ECBが昨年12月に示した経済見通しでは、今年のインフレ率は約1.0%となっていました。

その一方で同氏は「中国経済が急減速するとは予想していない」とし、中国発のリスクオフに過剰に反応することに対して、警戒感を示しました。同じくECB理事会メンバーのビルロワドガロー仏連銀総裁は「(欧州経済は) しっかりとした回復の最中にある」との認識を示すなど、独、仏などユーロ圏経済をリードする国々は、最近見られている市場の混乱の影響を比較的避けているようです。

ただギリシャ、ポルトガルなど経済基盤の弱い国々では、財政再建が滞っているとの観測が台頭しており、局所的に景気・経済の揺れが生じています。

依然として低いインフレ率と、ユーロ圏諸国間の景況感格差が、今後もユーロの重石になるとみられます。足もとのリスクオフの高まりから、ユーロ/米ドルは昨年10月以来の一時1.13ドル台乗せとなったものの、当面の上値節目とみられる1.15ドルを大きく超えるのは、難しそうです。<シニアアナリスト 山岸永幸>


【ポンド】 利上げ観測後退も、金融緩和は必要にない状況

ブロードベントBOE(英中銀)副総裁は5日、「低インフレが賃金の伸びに影響を及ぼしている兆候が幾分ある」とし、「当局者は政策金利引き上げを急いでいない」と述べました。前日の4日に、カーニーBOE総裁が「次の金利変更は利上げになるだろう」と発言し、ポンドが買われた直後だっただけに、その後ポンドは下げに転じました。
  
英MPC(金融政策委員会)は、賃金の伸びの低調さに懸念を示す一方、「賃金デフレが生じている兆しはない」としており、賃金の伸びが英国の利上げを遅らせているものの、金融緩和が必要な状況にはないと捉えているようです。年内利上げの可能性をめぐり、ポンドが揺れる状態がしばらく続きそうです。<山岸>


【豪ドル】 対円は再度77円台半ばを試す?

18日(木)に1月の豪雇用統計が発表されます。労働市場の順調な回復を背景に、RBA(豪中銀)は政策金利の2.00%据え置きを続けています。
 
2日の政策会合の声明では、「今後、新たな情報に基づいて、理事会は最近の労働市場の改善が継続するかどうか、最近の金融市場の混乱が世界や国内の需要の弱まりの前兆なのかどうかを判断する」と表明。そのうえで、「継続的な低インフレは、需要を支えるための一段の政策緩和(=利下げ)余地をもたらす可能性がある」との見解が示されました。

雇用統計が堅調な結果になれば、市場に根強いRBAの追加利下げ観測が後退するとみられます。そうなれば、豪ドルにとってプラス材料となりそうです。

ただ、市場ではリスクオフが強まっています。雇用統計が堅調な結果になったとしても、豪ドルは上値が重い展開になるかもしれません。豪ドル/円は11日安値の77.50円割れを再度試す可能性があります。<アナリスト 八代和也>


【NZドル】 対円は下押し圧力がかかりやすい状況

16日(火)に乳製品電子オークション(GDT)が開催されます。RBNZ(NZ中銀)は乳製品価格の動向を注視しており、昨年実施した4回の利下げは、乳製品価格下落による経済見通しの悪化が一因でした。

乳製品価格が再び下落し始めています。2日に開催されたオークションで、乳製品国際価格の指標となるGDT価格指数は656と、前回1月19日の708から低下。昨年9月1日以来の低水準となりました。

NZX乳製品先物取引所の粉ミルク先物価格は、前回のGDT前に比べてやや値を下げており、GDT価格指数は16日のオークションで一段と下落する可能性があります。乳製品価格の下落は、RBNZへの利下げ圧力の増大につながり、NZドルにとってマイナス材料です。

GDT価格指数が16日のオークションで上昇すれば、NZドルの下支え要因となりそうですが、ただ世界的な株安や原油安を背景に、市場では再びリスクオフが強まっています。GDTの結果によって強弱の違いは出そうですが、NZドルには下押し圧力が加わりやすいとみられます。NZドル/円は11日安値の73.10円に向かう可能性があります。<八代>


【トルコリラ、南アランド】 リスクオフが強まるなか、下値模索の展開か

世界的な株安や原油安を背景に、リスクオフに伴う円買い圧力が強まったことで、11日にトルコリラ/円は過去最安値を更新、南アランド/円も一時7円を割り込みました。来週は、月曜日(15日)にトルコの11月失業率、水曜日(17日)に南アフリカの1月CPI(消費者物価指数)が発表されます。

ただし、現在の市場の関心は、原油価格や世界の株価動向に向いています。他の高金利通貨と同様に、トルコリラや南アランドは、それぞれの経済指標よりも、原油や株価を背景としたリスク意識の変化の影響をより受けやすいとみられます。原油安が再び進行し、日本をはじめ株式市場が再び不安定化してきたことを考えると、トルコリラ/円や南アランド/円は下値模索の展開になる可能性があります。<八代>




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