市場調査部レポート

2017/12/08 13:18欧米の政治ドラマ、トルコの金融政策

【相場環境】大詰めを迎える欧米の政治ドラマ
【米ドル】米ドル/円のコアレンジとワイドレンジについて
【ユーロ】ユーロ/円、レンジワークが継続しそう
【英ポンド】英ポンド/円、強気基調が継続しそう
【トルコリラ】トルコ中銀は利上げするのか? 14日に注目!!
【加ドル】BOCは追加利上げを示唆も、慎重姿勢を維持


【相場環境】 大詰めを迎える欧米の政治ドラマ   

これから年末にかけて欧米の政治ドラマがいったん大詰めを迎えそうです。また、11日の週は多くの中銀が政策会合を開催します。米FRBの利上げが確実視されていますが、それ以外にも来年の金融政策についてどのようなメッセージが発信されるかに注目です。

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14-15日にEUサミット(首脳会議)が開催されます。注目は、英国とEUの離脱交渉に進展がみられて「次のステップ」開始が宣言されるかどうかです。「次のステップ」とは、ブレグジット後の英国とEUの通商関係等の交渉を指します。
4日のメイ英首相とユンケル委員長の会談では、(1)英国の負担金、(2)在英のEU市民や在EUの英市民の権利保障、(3)アイルランド(共和国、EU加盟)と北アイルランド(英国の一部)の国境問題、が焦点でした。(1)と(2)については進展が認められたものの、(3)について合意できませんでした。

アイルランド国境問題については、英国内にも様々な立場があります。「次のステップ」に進む最後のハードルとみられるために、集中した交渉が続けられているようですが、日本時間8日午前の段階で合意には至っていません。今後、11日のEUサミットの担当者(シェルパ)会合12日のEU閣僚会合などを経て、EUサミットで「次のステップ」開始の宣言につながるか大いに注目されます。宣言が先送りされるようであれば、英国とEUの合意なしでのブレグジット、メイ政権の崩壊などの懸念が強まる可能性があります。

他方、ドイツでは、最大野党のSPD(社会民主党)がメルケル首相との連立交渉開始を決定しました。SPDは今年9月の総選挙までは連立与党の一翼を担っていましたが、極右政党のAfD(ドイツのための選択肢)が躍進したため、AfDが最大野党となるのを阻止するために下野していました。
しかし、メルケル首相がFDP(自由民主党)と緑の党との連立工作に失敗したことで、SPDが再び連立政権に参加する可能性が出てきました。ドイツで安定的な政権が誕生すれば、ユーロにとってプラス材料となりそうです。

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米国では、議会が新たな継続予算を可決し、9日からのシャットダウン(政府機関の一部閉鎖)は回避されました。もっとも、新たな継続予算の期限は22日であり、猶予期間は2週間しかありません。その間に、不法移民の子供に対する特別措置(DACA)の延長や、オバマケアの保険加入義務付けの是非なども含めて議会が合意できるかは不透明です。22日の接近とともにシャットダウンの懸念が再燃する可能性はあります。ただし、シャットダウンが短期間であれば市場への影響は限定的でしょう。議会はさらなる継続予算を可決して、重要決定を来年に持ち越すかもしれません。

9日にはデットシーリング(債務上限)が復活します。政府はそれを超えて債務を増やすことができなくなります。ただ、財務省が「奥の手」を用いて資金をやりくりすることで、18年春頃までデフォルト(債務不履行)が現実味を帯びることはなさそうです。その頃までに、議会が税制改革や予算と絡めてデットシーリングを引き上げている可能性は高そうです。

米税制改革法案の議会審議も大詰めを迎えています。上院と下院はそれぞれ税制改革法案を可決しており、両院協議会によって一本化作業が始まりました(上院と下院が一本化案で合意し、大統領が署名すれば、成立します)。税率の所得階層や法人税減税の開始時期などの相違点がどのように調整されるのか、現時点では不透明です。トランプ大統領はクリスマスまでの成立を要求し、議会共和党は年内成立を目指していますが、一本化作業が来年に持ち越される可能性もあります。その場合、期待の高まっている市場が、いったんネガティブに反応するかもしれません。

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11日の週は、米欧英の中銀が政策会合を開催します。
12-13日の米FOMCは今年3回目の利上げに踏み切りそうです。注目は、イエレン議長の記者会見やFOMC参加者の経済・政策金利見通しを通じて、次の利上げのタイミングや来年の利上げペースに関してどのようなメッセージが発信されるか。

14日のECBとBOE(英中銀)は現状維持が予想されます。ECBは10月の理事会にQE(量的緩和)の縮小を決定したばかりです。そのため、金融政策正常化への新たな動きが少しでも示唆されれば、市場はユーロ高で反応しそうです。BOEは11月のMPC(金融政策委員会)において7対2で現状維持を決定、2人は即座の利上げを主張しました。今回、票決の内容が相場材料となるかもしれません。

11月のインフレの高まりを受けて、14日のTCMB(トルコ中銀)の会合では利上げ観測が急浮上しています。利上げの有無や利上げ幅に関して見方が大きく分かれるだけに、どんな結果が出ても市場は反応しそうです(詳細は後掲の【トルコリラ】をご参照)。

<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米ドル/円のコアレンジとワイドレンジについて

早速ですが、以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21日MA(21日移動平均線)が横向きとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) ローソク足が赤色の雲(=“売り”の雲)の上方にあること、3) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなっている (上図赤丸印)ことから、レンジ相場における「戻り」の時間帯であることが想定できます。

上図チャートでは、目先のレジスタンスラインと想定していた先行2スパン(≒112.75円)を、7日時点で上抜けブレークしており、仮にこれからの時間帯においてボリンジャーバンド(以下、BB)・+1σライン(≒113.14円)を終値ベースで上抜けブレークした場合は、次の上値メドとして、BB・+2σライン(≒113.90円)が視野に入ることになりそうです。(※8日午前、本稿執筆時点)

上図チャートから勘案する、当面の米ドル/円の日足コアレンジは、BB・±2σライン内のゾーンである110.90-113.90円を想定すべきでしょう。

その一方で、相場戦略の視野を広げるために、タイムフレーム(時間軸)を週足チャートに拡大して見てみましょう。以下、米ドル/円・週足・スパンモデル®+21週ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

日足チャートと同様、上図週足チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21週MA(21週移動平均線)が横向きとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) ローソク足が赤色の雲(=“売り”の雲)の中で推移していること、3) ローソク足の上方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)において、-DI>+DIとなっている (上図青丸印)ことから、上方硬直性を伴うレンジ相場であることが分かります。

特に、BB・±2σラインが21週MAに対してパラレルに推移していることから、当座の米ドル/円はBB・±2σラインの間のゾーン(上図Aゾーン≒108.20-114.90円)を週足ワイドレンジとするレンジ相場となりそうです。

一方で、現状では、ローソク足が21週MAでサポートされる形状となっていること、そして、赤色の雲の上辺である先行2スパン(≒112.97円)を上抜けていることもあり、21週MAとBB・+2σラインの間のゾーン(上図Bゾーン≒111.50-114.90円)を週足コアレンジとする相場展開が想定されます。

以上を総括すると、米ドル/円は日足チャート、週足チャートともに【レンジ相場】を示唆していることもあり、当面はレンジワーク主体の相場展開となりそうです。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/円、レンジワークが継続しそう

以下、ユーロ/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。

上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21日MA(21日移動平均線)が横向きとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) 薄い形状の雲が出現していること、3) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DIと-DI、ADXが収斂するような形状(上図赤丸印)となっていることから、典型的なレンジ相場であることが分かります。

上図チャートからも分かる通り、10月半ば(上図赤三角印)以来、BB・±2σラインの間のゾーンをベースとするレンジワークが継続しており、いわば“(テクニカル分析の)教科書通りの相場展開”となっています。

8日時点におけるBB・±2σラインの間のゾーンは、概ね131.40-134.00円。(上図括弧部分) 10月半ば以降におけるユーロ/円の高低レートは131.18-134.46円となっており、当該ゾーンとほぼ同じであると捉えてよいでしょう。

メルクマールの変化や各種カタリストの出現等で、コアレンジと想定する131.40-134.00円のコアレンジを逸脱する可能性は当然あり得るものの、8日時点におけるテクニカル指標をベースとする判断では、当該ゾーンをベースとするレンジワークが継続すると捉えていいのかもしれません。

<津田>


【英ポンド】 英ポンド/円、強気基調が継続しそう

以下、英ポンド/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+パラボリック+DMIをご覧ください。


 
上図チャートの各メルクマールを確認すると、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩上がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足の上方に位置していること、3) ローソク足がBB・+1σラインと同・+2σラインの間のゾーンで推移していること、3) ローソク足の下方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DI>-DIとなっている (上図赤丸印)ことから、典型的な上昇トレンドのチャート形状となっています。

上図チャートにおける着目ポイントは、3点。
 
まず1点目は、上記3)で挙げた通り、ローソク足がBB・+1σラインと同・+2σラインの間のゾーンを推移する【上昇バンドウォーク】が示現していること。当該バンド内は、いわば“居心地のいいゾーン”と捉えることができることもあり、巡航速度での上昇トレンドが継続しそうです。

2点目は、BB・±2σラインが21日MAに対して拡張(エクスパンション)する展開となっていること。(上図黄色矢印) 当該シグナルは、トレンドが(=この場合は上昇トレンド)が強まることを示唆しています。

そして3点目は、上記2)で挙げた通り、遅行スパンがローソク足を上抜けしていること。(上図赤三角印) これは上昇トレンドのトリガー(引き金)と見られており、本格的な上昇トレンドの起点となり得る可能性も。

各種メルクマールを総合すると、当面の英ポンド/円は強気基調が継続する相場展開となりそうです。

<津田>


【トルコリラ】 トルコ中銀は利上げするのか? 14日に注目!!

トルコリラは今週(12月4日の週)、小反発しました。TCMB(トルコ中銀)が12月14日の政策会合で、利上げ(後期流動性貸出金利の引き上げ)を行うとの観測が浮上したことが背景にあると考えられます。

14日の会合でのTCMBの決定が今後のトルコリラの動向に影響を及ぼす可能性があります。

トルコの11月のCPI(消費者物価指数)は前年比+12.98%と、10月の+11.90%から加速。トルコ統計局がCPIの基準年を2003年に変更して以降、最も高い上昇率となりました。また、エルドアン大統領の主席経済顧問であるエルテム氏が11月23日、「インフレ見通しが悪化すれば、TCMBはいつでも利上げ可能だ」と語りました。インフレ圧力の高まりに加え、エルテム氏がTCMBの利上げを容認する発言を行ったことで、市場ではTCMBが今回、利上げに踏み切るとの見方が強まりました。

一方で、TCMBは11月1日の段階では利上げは必要ないとの見解を示していました。チェティンカヤ総裁は同日、トルコリラのボラティリティや原油価格の上昇がインフレ率を短期的に押し上げる可能性があると指摘し、11月のインフレ率は予想よりも高くなるかもしれないと語りました。ただし、チェティンカヤ総裁は、インフレ率は12月から鈍化し始め、インフレ圧力は2018年に緩和するとし、「TCMBの現在の政策スタンスはインフレを鈍化させるのに十分なほどタイトだ」との見解を示しました。11月以降のトルコリラ安をTCMBがどう判断するのか不透明な部分があるものの、今回、後期流動性貸出金利が据え置かれる可能性もありそうです。

市場で利上げ期待が高まっているだけに、後期流動性貸出金利が据え置かれた場合、失望感が広がり、トルコリラ売りが加速する可能性があります。利上げが決定されれば、トルコリラにとってプラス材料と考えられます。ただし、利上げ幅が0.25-0.50%で市場が不十分と受け止めれば、利上げが決定されたとしても、トルコリラは下落する可能性もあります。

<シニアアナリスト 八代和也>


【加ドル】 BOCは追加利上げを示唆も、慎重姿勢を維持   

BOC(カナダ中銀)は12月6日の会合で、政策金利を1.00%に据え置くことを決定しました。据え置きは2回連続です。

声明では、カナダ経済について楽観的な見方が示されました。声明は、「最近のデータは、10月時点の見通しに沿っている」としつつ、「雇用の伸びは非常に力強く、また賃金は若干改善し、堅調な消費支出を支えている」と指摘。「輸出は7-9月期に予想以上に減少したものの、最新の貿易統計は外需が強まるとともに輸出の伸びが回復するとの見通しを支援している」との見方が示されました。

インフレに関しては、「予想を若干上回っており、短期的にはガソリン価格などの一時的な要因によって一段と上昇する」と分析。「コアインフレ指標は、経済のスラック(たるみ)の縮小が続いていることにより、ここ数か月間は上向いている」と指摘しました。「雇用が増加し、労働参加率が上昇しているのにもかかわらず、労働市場のスラックは縮小しつつあることが示されている」との見方を示しました、

他方、声明から加ドル高の悪影響に言及した文言が今回削除されました。前回は、「最近の加ドルの上昇によって、インフレ率が2%に上昇する時期が7月時点の予想よりも若干後ずれする」「カナダドル高の影響で、輸出の伸びがいくぶん鈍化する可能性がある」としていました。

金融政策に関しては、「時間とともに、利上げが必要になる可能性がある」とする一方、「BOCは引き続き慎重姿勢であり続ける」と表明。そのうえで、「金利に対する経済の感度、経済の能力の変化、賃金の伸びとインフレの両方のダイナミクスを評価するため、BOCは今後発表されるデータに導かれる」とし、前回10月の文言を繰り返しました。

BOCの声明発表後に加ドルは下落しました。BOCが利上げに慎重な姿勢を改めて示し、利上げのタイミングは経済指標次第としたためです。ただ、市場では、BOCはいずれ利上げに踏み切るとの見方が有力です。利上げ観測が残るとみられるため、今回の声明を材料に加ドルが下落を続ける状況ではなさそうです。

<八代>


※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

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