2分でわかるアメリカ

2011/01/19日本で注目されない歴史的イベント


日本のメディアが事実関係しか報道しない一方、アメリカのメディアがトップ級で連日報道することが過去に何度もありました。地理的に遠い、あるいは繋がりが薄いからだと思うのですが、このニュースは、「ベルリンの壁崩壊」に似た「アラブ政治の崩壊」という歴史的なイベントに発展する可能性が高いため、あえてコーナーで取り上げます。

チュニジアは北アフリカに位置する人口1000万人の小国です。北と東側は地中海に面していて、海を渡ればイタリアです。公用語はアラビア語、かつてフランスの植民地だったためフランス語も幅広く使われています。

ベルリンの壁が崩壊する2年前、1987年の無血クーデターでベン・アリ大統領が誕生しました。最初は安定したのですが、金融危機後の対応が遅れ、チュニジア国民の生活は、どんどん悪くなっていきました。大統領の独裁、汚職、そして生活の悪化に怒った国民は、先月から反大統領のデモを繰り広げ、それが暴動に発展しました。そして、先週14日、大統領がサウジアラビアに逃亡しました。国民による民主革命です。

ただの革命であれば、アフリカでときどきあるイベントにすぎないのですが、今回のチュニジアの革命は、エジプトシリアレバノンヨルダンイランアルジェリアなどアラブ諸国に連鎖しはじめていること、そして、背景にウィキリークスとアメリカ政府がいることで重要な意味があります。

ベン・アリ大統領が国外逃亡した直後、エジプトの首都では「お祝いの集会」が開かれました。エジプトに30年も君臨するムバラク大統領への不満が高まっているからです。80年代終わりから90年代はじめに東欧で起こったような、ドミノ現象がアラブ全体に広がり専制政治体制が崩壊する可能性があります。

チュニジアのデモが拡大したきっかけはウィキリークスでした。アメリカ政府が、一族の汚職を背景にベン・アリ政権を信用していないことをリークした公電がリークされたのです。「大きな動き」を察知したクリントン国務長官は先週アラブ各国を歴訪、「アラブ各国の民主主義が不十分」と訴えました。ベン・アリ政権が崩壊した直後、オバマ大統領は、歓迎する意向を示しました。

 アメリカとアラブ諸国との関係が歴史的に転換しようとしています。アメリカのメディアはきょうもチュニジア関連のニュースをトップ級で伝えています。アラブは産油地帯でもあるため、ドミノ現象が本格化すれば日本にも大きな影響が出る可能性があります。
 

[January 18, 2011] No 010332

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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