2018/05/25輸入車25%関税の衝撃
トランプ政権は23日、自動車の輸入が安全保障におよぼす影響について調査を開始すると発表しました。予想されていたことですが、それでも世界に衝撃を与えました。
アメリカ通商拡大法232条は、安全保障を理由とする輸入制限を定めた国防条項です。商務省はこれに基づき、乗用車やトラックなど自動車全般と自動車部品を対象に、今後数カ月かけて安全保障上の脅威になっていないか調査します。
「クロ」と判断された場合、輸入車に最大で25%の関税を課す方向だとアメリカの主要メディアは伝えました。トランプ政権は先に、鉄鋼の輸入品に25%、アルミニウムに10%の関税を導入しています。調査で「安保上の脅威」とみなされていました。
去年アメリカで販売された自動車の44%は輸入車。ロサンゼルスのフリーウェイ(高速道路)では、日本車とドイツ車が非常に目立ちます。多くの外国メーカーがアメリカ国内に工場を持っていますが、トランプ政権はまだ公平ではないと考えているようです。
議会報道のザ・ヒルによると、輸入車の24%はメキシコから、22%がカナダです。北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し交渉が難航していますが、トランプ政権はメキシコとカナダから譲歩を引き出すために本格的な調査に着手したとも受け取れます。
輸入車の22%はドイツを中心としたEU、21%が日本、そして8%は韓国。いずれもアメリカの重要な同盟国ですが、反発は必至です。
自動車産業のアナリストは、「25%関税」が輸入車の価格に転嫁され、アメリカの消費者は打撃を受けると警告しています。ただ、鉄鋼のときもそうでしたが、トランプ政権が聞く耳を持つとは思えません。共和党の支持基盤であるミシガンやオハイオにアメリカの自動車メーカーの拠点が集中しているからです。中間選挙を11月に控え、雇用の確保を優先するとみられます。トランプ大統領は「アメリカの自動車メーカーにとってビッグニュースだ」とツイートしました。
[May 24, 2018] No 031843904
※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。
※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。
※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。
このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。
【データ提供】
松島 新(まつしま あらた)氏

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。
バックナンバー
- 2019.02.22 更新米住宅失速、弱い経済指標相次ぐ失業率が歴史的に低水準にあるものの、直近の最低値から30ベーシスポイント(0.3%)上がり、アメリカ経済が景気後退に向かう可能性が指摘されていると前日のコラムで…
- 2019.02.21 更新「米リセッションの指標」に黄色信号世界的に景気減速の兆しがあるが、アメリカ経済は堅調。ウォール街、政府がそう認識しているほか、一般的にも「景気が悪くない」と考えられています。ただ、アメリカで生活…
- 2019.02.20 更新16州がトランプ氏提訴、勝算は「トランプ大統領がメキシコ国境に壁を建設するため国家非常事態を宣言したことは憲法違反だ」。16の州が18日、トランプ大統領を相手にサンフランシスコ連邦地裁に提訴…
- 2019.02.16 更新トランプ非常事態宣言、次に起こることアメリカのトランプ大統領が15日、ホワイトハウスで記者会見し、メキシコとの国境に壁を建設するため、非常事態を宣言しました。壁があれば、麻薬ディーラーやギャングの…
- 2019.02.15 更新アメリカが買わないA380ANAがエアバスA380の就航に合わせてハワイ便を刷新する計画です。ハワイ路線で初めてファーストクラスを導入、5月24日に成田ホノルル便が就航します。8席しかな…
「日刊2分でわかるアメリカ(2分でアメリカがわかる)」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。
そのほかのマーケット情報
- 今週はこう動く! マーケット羅針盤 【2019.02.18 更新】今週の注目通貨(米ドル/円)
- 日刊2分でわかるアメリカ(2分でアメリカを見る) 【2019.02.22 更新】マーケット: 豪ドル安い、円堅調
- 日刊2分でわかるアメリカ(2分でアメリカを知る) 【2019.02.22 更新】景気不透明感で金買いvs米中期待でパラジウム買い
- 週刊2分でわかる豪・NZ 【2019.02.21 更新】豪ドル上値限定か、注目集めたRBAの分析
- 週刊2分でわかるトルコ 【2019.02.18 更新】トルコリラ相場は適正か
- 市場調査部エクスプレス Todays'Flash! 【2019.02.22 09:03 更新】米中通商協議に注目。米大統領と中国副首相が米東部時間22日午後に会談!?
- 市場調査部エクスプレス スポットコメント 【2019.02.22 08:18 更新】ブレグジット、離脱日を3カ月延期も
- 市場調査部エクスプレス 注目のチャート 【2019.02.22 09:13 更新】トルコリラ/円、徐々に下値を試す相場展開となりそう
- FXニュース 最新のFXニュースヘッドラインを提供しております。
- FXチャート リアルタイムのFXチャートをご覧いただけます。
- 経済カレンダー 市場に影響を与える可能性がある各種経済イベントをカレンダーで提供しております。
- 政策金利データ 主要各国の政策金利表を提供しております。
- ヒストリカルデータ 日足・週足・月足の4本値データをダウンロード提供しております。
- 主要指標 LDN-NY関連・アジア・オセアニア関連の指標を提供しております。
- みんなのリピート 各通貨ペアのリピート注文発注状況および成立状況をご覧いただけます。