2分でわかるアメリカ

2010/12/01ソフトダラーとインサイダー


「ウルトラダラー」は元NHK記者の手嶋龍一さんが書いた偽ドルを巡る小説。それでは「ソフトダラー」って聞いたことがありますか。

ソフトダラーとは、現金、つまり「ハードダラー」に対する言葉です。例えば、投資信託会社が証券会社に株の売買を発注します。証券会社は1%の手数料をとることにします。ところが注文を発注した投信会社は本来の手数料より高い2%の手数料を払います。個人投資家と違って、まとまった株数を注文するので、手数料が1%違ってもかなり高額になります。

余計に払われた1%分は「ソフトダラー」と呼ばれ、代償として証券会社は金融情報などを提供するのです。自前のアナリストだけではなく、情報機関の端末を提供したり外部のレポートを買ってクライアントである投信会社に渡します。投信会社は経費で処理できない情報が間接的に購入できます。

大手家電店などで買い物をするとポイントが貰えます。あるいは、飛行機に搭乗するとマイルが貯まりますね。これも広義でソフトダラーにあたります。

ウォール街のソフトダラーはかつて、さまざまな便宜供与に使われていました。このため、当局が規制、いまではほとんどが情報提供への支払いで使われています。

提供されるレポートまたは情報には、驚くほど高額なモノがあります。コンサルタントや独立系アナリストがつくる専門家ネットワークが提供する情報は公表されていない企業の秘密が多く含まれていることがあります。ハイテク会社が集中するカリフォルニアには、ハイテク専門の「深い」情報を提供する会社が何社もあります。また、ヘッジファンドに「深い」情報を提供する会社も数多く存在します。

先週のコラムでも書きましたが、証券取引を監視するSECと連邦捜査当局であるFBIが、ヘッジファンドや情報提供会社を相次いで捜査しています。逮捕者も出ました。今週も捜査が続いています。「捜査では、ソフトダラーがどう使われたかが集中的に調べられている」とウォール・ストリート・ジャーナルが報じています。

アメリカのソフトダラーの総額は、年100億ドルから150億ドル、日本円で1兆円以上使われています。ソフトダラーを巡る捜査は、ウォール街の「持ちつ持たれつ」の関係にメスを入れるもので注目です。  

[November 30, 2010] No 010299

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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