2分でわかるアメリカ

2017/12/19レパトリ進むか、米ドル相場に影響も

アメリカの歴史的な税制改革が、早ければ今週中、遅くとも年末までに成立する公算が高まりました。法案に反対していた与党・共和党の上院議員の一部が賛成に転じたからです。下院は19日に採決、可決する方向。上院も今週に採決する可能性があります。


税制改革はビジネス出身のトランプ大統領の最優先政策。共和党の最終案は、企業に有利な税制になっています。法人税率が現行の35%から21%へ引き下げることが盛り込まれました。トランプ政権は、減税で企業が積極的に設備投資し、賃金も上がると主張しました。


ブルームバーグに興味深いコラムがありました。先月のイベントで、「法人税の引き下げを受け投資を拡大するか」と企業経営者らに尋ねたところ、挙がった手はまばらだったそうです。コラムの筆者は、企業は資金が充分にあり、税制改革は不要だと主張。税制改革は賃金の急上昇と成長加速につながらない、「失策」だとしています。


「失策」になるかどうか。鍵を握りそうなのが海外に多額の資金を留保しているアメリカのIT企業や医薬品会社の動向です。
アメリカでは現在、海外子会社から配当を受け取る際に35%の税金がかかります。このため、大企業の多くが課税を回避するため資金を海外に置きっぱなしにしています。その額は、2.6兆米ドル(約290兆円)と試算されています。


最も多いのがアップルで2400億米ドル(約27兆円)。2番目はマイクロソフトで1320億米ドル(約14兆8000億円)。それぞれ利益の90%程度を税率が低いプエルトリコ、アイルランド、シンガポールなどに滞留させています。


トランプ大統領は、企業の海外利益をアメリカに還流させるため、いわゆる「レパトリ税」を10%程度にするよう求めました。しかし、共和党の最終案では、現金への税率は15.5%に設定されました。ウォールストリートジャーナルは、マイクロソフトなどがレパトリを進めるか不明だと伝えました。


海外にあるアメリカ企業の資金のほとんどは米国債だとみられています。レパトリの際は、米国債を売ることになります。結果として米国債の利回りが上昇、米ドル高につながる可能性があります。税制改革により、レパトリが進むかが注目されています。


 
[December 18, 2017]  No 031843801

※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

NOTE

このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。

Market Editors
【データ提供】

PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

バックナンバー

  • 2019.02.16 更新トランプ非常事態宣言、次に起こることアメリカのトランプ大統領が15日、ホワイトハウスで記者会見し、メキシコとの国境に壁を建設するため、非常事態を宣言しました。壁があれば、麻薬ディーラーやギャングの…
  • 2019.02.15 更新アメリカが買わないA380ANAがエアバスA380の就航に合わせてハワイ便を刷新する計画です。ハワイ路線で初めてファーストクラスを導入、5月24日に成田ホノルル便が就航します。8席しかな…
  • 2019.02.14 更新トランプ大統領、アカデミー賞みる?メキシコとの国境の警備を強化するための予算案で、与野党が11日までに原則合意しました。14日に上下両院が採決し、可決する方向。法案がホワイトハウスに送られること…
  • 2019.02.13 更新現金ポジション膨らむ、両極端な見方ファンドマネジャーを対象にしたバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの最新の調査で、キャッシュ・ポジションが、2009年1月以降、つまり過去10年で最大規模になっ…
  • 2019.02.12 更新エルパソ対決、物理的壁とバーチャル壁連邦議会の超党派17人で構成される特別委員会が週末、政府機関が再び一部閉鎖することを回避するため、メキシコ国境の警備強化と不法移民問題について協議しました。妥協…

「日刊2分でわかるアメリカ(2分でアメリカがわかる)」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ