2分でわかるアメリカ

2010/11/09増えるハイパーインフレ説


近所のドラッグストアでレジ待ちの行列に並んでいると、後ろの中年のカップルが「政府がお金を刷りまくって心配」という話をしていました。先週末のコラムに書きましたが、不況下で物価が上がるスタグフレーションの現象が僕の周辺で起きています。FRBが総額6000億ドルの追加金融緩和第2弾を決めましたが、カネ余りが極端なインフレ、つまりハイパーインフレという副作用を招くという主張が増えています。

ハイパーインフレを巡る議論の背景は、先週のFOMC以降、ドルが売られる反面、金、銀、銅といった貴金属をはじめとする商品相場の上昇率が一段高くなっていることです。株式相場・債券相場も上昇傾向にあります。

著名なエコノミストであるエド・ヤルデニ氏は、経済チャンネルのCNBCのインタビューに対し「追加金融緩和は悪い方法で債券商品のバブルを招く確率を高める」と主張しています。ラジオのトーク番組はきのう、「ハイパーインフレにどう対応するか」というテーマを取り上げていました。

また、ウォール・ストリート・ジャーナルの週末版は「70年前に金融危機リスクを主張した男」として、メルチオ・パリイというエコノミストの話を紹介しています。パリイ氏は、ドイツで1920年代に起こったハイパーインフレに対応したドイツの中央銀行のアドバイザーで、ヒトラーが政権についた直後にアメリカに渡りました。パリイ氏は量的緩和が債券バブルとインフレを招くと一貫して主張しました。

エコノミストやメディアだけではなく、外国政府もアメリカの追加緩和の副作用を警戒しています。ドイツ、ブラジル、中国、そして南アフリカの政府関係者が「追加緩和がドルの価値を押し下げ投資マネーが新興国や商品市場に大量に流れ込む」として、今週後半にソウルで開かれるG20首脳会議で、アメリカの対応を全面的に批判する構えです。ロイターは「G20がG19+1になったようだ」と追加緩和への批判がいかに幅広いかを表現しています。

週明け8日のマーケットは、ヨーロッパの債務危機への懸念というアメリカ以外の理由で、ドルが買い戻され、商品相場がやや軟調に推移していますが、ドル以外の商品が高くなるというトレンドは変わらないとマーケット関係者は予想しています。ハイパーインフレやスタグフレーションが起こるかは時間が経たないとわかりません。ただ、内外から批判が相次いでいることで、FRB内で副作用についてより活発に議論される可能性があります。  

[November 08, 2010] No 010284

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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