2分でわかるアメリカ

2017/06/01「現金の呪い」説は機能する?

インドの統計局が31日に発表した今年第1四半期(1-3月)のGDP成長率は前年同期比で6.1%増でした。エコノミストの予想は7.1%増でしたので、それを大きく下回りました。モディ首相が去年11月に打ち出した高額紙幣の廃止策が影響したと分析されています。

「The Curse of Cash」と題された本が世界の中央銀行関係者で話題になっていると聞きました。去年9月に発売されたハーバード大学のケネス・ロゴフ教授の最新作です。日本では「現金の呪い」というタイトルで4月6日に発売されました。ロゴフ教授は著書の中で、高額紙幣を廃止した「キャッシュレス社会」が経済の問題を解決すると主張しています。マイナス金利にも役立つと。

実施に踏み切ったインドのほか、オーストラリアやユーロ圏などでも高額紙幣の廃止が検討されています(オーストラリアはプラスティック札です)。脱税、偽造、密輸など、犯罪に高額紙幣が使われることが多いほか、実態が把握できない「タンス貯金」を減らしたいからです。

アメリカでは高額紙幣の廃止論は盛り上がっていません。いまのところ。そもそもアメリカでは、最高紙幣の100米ドル札を見かけることは稀です。カジノがあるラスベガスを除けば、カード社会のアメリカで現金を持ち歩く習慣がありません。妻の財布に10米ドル(約1110円)以上入っていることは稀です。財布は「札入れ」ではなく、「カード入れ」になっています。流通は20米ドル札が圧倒的に多い。

日本はどうか。日銀と財務省の統計では、1万円札の流通が目立って多い。電子マネーが普及しましたが、まだまだ「キャッシュ社会。ぎっしり1万円札が詰まった札入れを持ち歩いている人が少なくない。ロゴフ教授に従い1万円札が廃止されたらどうなるのか。パニックになると想像します。ただ、インドの例をみると、高額紙幣を廃止しても、すべての問題が解決するというわけにはいかないようです。
 

 [May 31, 2017]  No 031843663

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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