2分でわかるアメリカ

2017/03/02観衆の力を利用したソフトな大統領

アメリカのドナルド・トランプ大統領による2月28日の議会での施政方針演説。演説は、ワシントンのプライムタイムの午後9時、ロサンゼルスのニュースの時間である午後6時にあわせて始まりました。異色の大統領による初めての「大演説」とあって、内外の高い注目を集めました。主要テレビ各社が生中継、個人的に再放送分を含めて2回視聴しました。

演説はちょうど60分。いつもの過激さはなく、ソフトなトーンで安定していました。演説前にクルマの中で「練習」するトランプ大統領の写真が報じられましたが、相当の時間をかけて準備したようです。練習の成果があったと感じたのか、ガッツポーズもありました。

内容に新鮮味が無く、減税やインフラ投資の具体策が示されませんでした。94回のスタンディング・オベーション(観客が立ち上がって拍手を送ること)がありましたが、そのほとんどは共和党だけ。会場の半分を占めた民主党は座ったままで、上下両院が分断していることを示しました。

ただ、海軍特殊部隊の夫を亡くした女性を応援する際は、両党議員によるスタンディング・オベーションが1分42秒も続きました。ギネスブック入りか。トランプ大統領は、「観衆の力」をうまく利用、感動的な演説に仕立てました。

主要メディアの評価は好意的でした。「トーンがソフトになった」「驚くほど大統領らしく、安定して力強かった」と報じました。そこには、いつもの批判的な報道はありませんでした。

経済面の具体策はありませんでしたが、オバマケア(医療保険制度改革)の見直しと移民政策では「発見」がありました。

特に、移民政策では、入国ビザ(査証)の対象を、高度の技術や能力を持つ人や投資家に限定する方針を示しました。国に恩恵となる優秀な人だけに長期滞在を認めるというもの。アメリカでは過去50年、多様性を持たせるため幅広い人種、国籍、職種を対象にビザを発給、グリーンカード(永住権)を与えてきましたが、抜本的に見直すことを示唆しました。1965年にリンドン・ジョンソン大統領とテッド・ケネディ上院議員が主導した移民改革を連想させるものでした。

トランプ大統領の昨夜の演説は、「大きな変化」を想像させました。いい意味でも悪い意味でも。1日のニューヨーク市場では株高、米ドル高が進み、トランプ大統領への期待をあらたにしたことを示しました。期待が続くかどうかは、大統領の実行力にかかっています。


[March 01, 2017]  No 031843602

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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