2分でわかるアメリカ

2017/02/28トランプ批判とPwCの大ミス

アメリカ人はよく映画をみる。ニューヨークに初めて駐在した時の感想です。今もその考えは変わらない。だから、映画の祭典であるアカデミー賞授賞式は全米が注目する。日本人が想像する以上に。特に、スターや監督のほとんどが住むロサンゼルスでの関心は高く、授賞式の夜は道路がガラガラになります。誰もがテレビ鑑賞。自宅やレストランで。

大手映画会社に勤務する妻が、映画プロデューサーのロシア人夫妻を我が家に招きました。ロシア料理とワインでアカデミー賞授賞式をテレビ鑑賞するのが我が家の恒例行事。昨夜は、いつになく盛り上がった。アカデミー賞が異例づくめだったからです。

89回目のアカデミー賞授賞式は、数日前から「トランプ批判が炸裂する」と噂になっていました。司会者の台本の一部の情報が流出したのだと思います。その通りでした。トランプ大統領がイスラム圏7カ国の入国を一時禁止した政策などを、司会でコメディアンのジミー・キンメル氏が繰り返し皮肉りました。その度に拍手喝采。

受賞者のトランプ大統領批判もすごかった。「セールスマン」で外国映画賞を受賞したイラン人のファルハディ監督は出席をボイコット、ロンドンで過ごしたそうです。ロンドン市長はイスラム教徒。

過去3年、アカデミー賞が白人に偏っていると批判されました。その批判と、トランプ大統領を意識したのか、今年は幅広い人種、国籍、宗教の人が関わった作品や人物がノミネートされ、その多くが最優秀賞を受賞しました。多様性の重要さを訴えるハリウッドのメッセージだと思います。

授賞式のハイライト、最高の栄誉である最優秀作品賞の発表には驚かされました。受賞作品はミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」と発表され、プロデューサーが喜びのスピーチをしました。しかし、途中で式典スタッフが受賞したのは別の作品だと伝えました。「ムーンライト」が「本当の最優秀作品だ」と。会場は一時騒然。最初は演出かと思いましたが、「本当のミス」だったようです。

アカデミー賞は、映画関係者の投票によって決められます。集計は過去80年、大手会計会社のプライス・ウォーター・ハウス(PwC)が担当しています。PwCは27日、間違って別の封筒を渡したとして謝罪する声明を発表しました。長い時間をかけて準備されたトランプ批判がきょうの朝刊のトップニュースになるはずでしたが、発表ミスがヘッドラインになりました。


[February 27, 2017]  No 031843600

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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