2分でわかるアメリカ

2017/01/25「名指し」が怖いCEO

かつて、親しくしていた海外経験が豊富な日本の大手企業の幹部から「政治はビジネスに関係ない」と聞きました。政治とビジネスは分けて考えるべきだと。この企業幹部がいまの状況をどう考えているのか。機会があったら、ぜひ聞いてみたい。

ドナルド・トランプ第45代大統領が就任。アメリカは歴史的な転換期に入りました。通商、税制、規制から国際的枠組みまで、歴代の大統領が続けてきた路線が抜本的に見直されます。方向に背くもの、企業は、「おしおき」される可能性があります。

ニューヨーク・タイムズは、世界の大企業のCEOが精力的に動く新大統領に怯えていると伝えました。かつては「物言う株主」のカール・アイカーンに狙われることを恐れていたが、いまはトランプ大統領から異なる恐怖を感じているとしています。

具体的には、ツイッターでトランプ氏から名指しして批判された場合、企業戦略の見直しを迫られ、自らのキャリアにも打撃となる可能性があります。トランプ氏はこれまで、ロッキード、GM、フォード、トヨタなどをツイッターで批判しました。これを受け、フォードはメキシコでの工場建設計画を白紙に戻し、アメリカ国内の工場に新規に投資する方針に転換しました。

通商政策で強硬な姿勢を示すトランプ大統領にヘッジをかける企業もあります。アップルのiPhoneを委託製造する台湾のフォックスコンは23日、70億米ドルを投じてアメリカに新工場を建設する計画を発表しました。アリババの馬雲会長やソフトバンクの孫社長は、トランプ氏に大型投資や大量雇用の方針を伝えました。アマゾンもアメリカ国内で新規に大量雇用する方針を示しています。

ホワイハウスには、連日、企業のCEOが招かれています。トランプ大統領と意見交換をすることが目的。参加したCEOは、大統領の真意を探るのと同時に、名指しで批判されないよう関係を築きたいと考えていると想像します。たぶん。アメリカが「恐怖政治」になったわけではありませんが、異端の大統領が導く「アメリカ第一主義」の政治に合わせて企業が戦略の練り直しを迫られる時代に入りました。新時代はまだ始まったばかりです。
 

[January 24, 2017]  No 031843579

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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