2分でわかるアメリカ

2010/10/12「通貨」を巡る日米報道の温度差


週末にワシントンでIMF年次総会が開催され、「通貨戦争」「中国の人民元問題」が主に話し合われました。初日の8日夜にはG7財務相・中央銀行総裁会議が開かれました。新聞やテレビ、ネットのニュースで会議の結果をお読みになったり、ご覧になったのではないでしょうか。

一連の会議に関して、日経新聞は「G7、人民元切り上げ促す」「通貨安定へ資本移動強化」、朝日新聞は「米、IMFに為替政策の監視強化要請」などの見出しで報道。他の日本のメディアも、「G7が協力して中国を含めた新興国に通貨の柔軟化を促すことで合意、IMFが通貨の監視を強化する声明を発表した」と伝えています。  

しかし、欧米では、全く違う報道が目立ちます。ウォール街関係者が必ず読んでいるウォール・ストリート・ジャーナルは「IMFでの会議は通貨問題解決に失敗」との見出しで、「議論が平行線で、方向すら決められなかった」と報じています。ニューヨーク・タイムズは、通貨問題で合意が得られなかったことを指摘した上で、声明については「文言は非効率的」とのIMFのストロス・カーン専務理事のコメントを紹介、声明が骨抜きであることを伝えています。

イギリスの有力紙フィナンシャル・タイムズもアメリカと視点が似ています。「世界が経済で衝突」との見出しで、何の合意もなかったことを説明しています。同紙は『中国側が「主要な国の異常に低い金利などが新興国の重荷になっている」と主張、切り上げを求めるアメリカなどと平行線だった』と報じています。アメリカもイギリスもG7にはほとんど触れていません

温度差というよりも、かなり違った報道になっていることがおわかりになると思います。背景には、情報源があると思われます。日本のメディアは、財務省担当の記者が日本から同行したため、会議後の財務省による同行記者向けの説明や野田財務大臣の会見などを基に記事が書かれるのに対し、欧米のメディアはアメリカやEUだけではなく新興国の出席者にも幅広く取材するためです。語学の問題もあると思います。

かつては、G7の合意が世界の方向になったのですが、中国が世界第2位の経済大国になり、インドやブラジル、ロシアといった新興国の経済力が強くなった今、日本人発の情報だけでは全体像が見えにくくなっています

[October 11, 2010] No 010266

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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