2分でわかるアメリカ

2016/10/14ブレグジットの重すぎるツケ

イギリスのメイ首相は、来年3月末までにEUから離脱する手続きを開始する方針です。

EUは2009年に基本条約を発効しました。ポルトガルのリスボンで開かれた首脳会議で合意した条約のため、「リスボン条約」と呼ばれます。その第50条は、脱退を決めた国は加盟各国の首脳で構成される欧州理事会に通告、2年後にその国へのEU法の適用を停止すると定めています。仮に来年3月31日にメイ首相が理事会に正式に通知した場合、2019年3月末までにすべての手続きを終えることになります。

交渉は非常に複雑。なにしろ過去に例がありません。人、モノ、サービスの3つの移動の自由がEUの基本原則ですが、脱退後のイギリスの扱いが焦点になります。世界的な金融センターのロンドン・シティを抱えるイギリスに拠点を置く金融機関が単一市場にどこまでアクセスを許されるのか、移民問題をどう扱うのか、関税をどうするかなど難問が山積み。「お金の問題」も重いです。離婚協議と呼ばれますが、まさに「複雑な離婚問題」になることが確実です。

フィナンシャル・タイムズのアナリストの試算によりますと、離婚のためのイギリスの負担は200億ユーロ(約2兆3000億円)に及びます。この中には、イギリスが既にコミットした年金の負担金も含まれています。

EUへの影響も大きいです。EUは北部のお金持ちの国が、南部や東部の貧しい国を援助する構図になっています。イギリスは当然、前者に属するのですが、離脱後のイギリス分の負担がドイツやフランスに回ってきます。メルケル首相やオランド大統領が「交渉は厳格に」と強調するのは、こうした背景があります。

6月の国民投票の際、離脱派は「多額のお金がセーブできる」と主張しました。離婚の巨額負担がここまで大きいとは誰も想像していなかったと思います。

イギリスの通貨ポンドは対米ドルで31年ぶりの安値を更新。対ユーロでは6年ぶりの安値をつけました。イングランド銀行の発表では、ポンドの貿易加重平均は11日に過去最低を記録しました。イングランド銀行とソロス氏が戦った1992年のポンド危機、さらには、世界恐慌を受けイギリスが金本位制を停止した1931年の水準を下回りました。

個人的には、ポンドはまだ高すぎると思います。日本人が旅行すると、今の水準でも物価が非常に高いと感じるはずです。マーケットでは、ポンドがさらに下がるとの見方が優勢です。離婚の負担はユーロ払い。イギリス政府の負担がさらに重くなりそうです。
 
 [October 13, 2016]  No 031843512

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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