2分でわかるアメリカ

2016/10/04タイミングが絶妙、追い込まれたトランプ

毎晩の習慣になっているウォーキング。サンタモニカのモンタナ通りをビーチまで歩くのですが、途中に民主党の大統領候補、ヒラリー・クリントン氏の選挙事務所があります。日を重ねるごとに人が増えています。一方、アメリカ国籍を持つ妻に、11月8日の選挙に関する選挙管理委員会の少し厚めの冊子が送られてきました。

選挙戦が終盤戦に入った重要な時期に、共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏が厳しい立場に追い込まれました。

The New York Timesが週末に報じた「税逃れ」のスクープ記事は衝撃的でした。カジノ経営、航空事業への参入、そしてニューヨーク5番街のプラザホテルの経営などの失敗で、1995年に9億1600万ドル(約925億円)の損失を計上していた確定申告書のコピーを掲載しました。1995年を含め18年間に渡り連邦所得税の支払いを逃れてきた可能性が高いと指摘しました。

トランプ氏はツイッターで「自分ほど複雑な税制を理解している候補はいない」として事実上、報道を認めました。トランプ氏を支持するニューヨーク市のジュリアーニ元市長は「トランプ氏は天才だ」とCNNに語りました。

トランプ氏が実業家であれば「うまく節税した」と評価されたかもしれません。しかし、トランプ氏は世界で最も影響力があるアメリカ大統領の有力候補。税逃れは、大多数の有権者との格差を浮き彫りにしたと同時に、「不動産王」としての名声を大きく傷つけました。

2012年の大統領選で共和党の候補だったミット・ロムニー氏は、プライベート・エクイティの事業で成功、資産家として知られています。確定申告所の提出を躊躇したことで、「何かを隠している」と攻撃され劣勢に立たされました。最終的に公表したのですが、税制の隙間を利用して大幅に節税していました。

トランプ氏は最後まで過去の所得を公表しない可能性があります。ピュー・リサーチの調査では、アメリカの有権者の60%が「お金持ちが本来の税金を納めるべきだ」と考えています。

The New York Timesの記事は、編集宛に郵送された無記名の手紙が情報源。リークされたものですが、タイミングが絶妙。トランプ氏の命取りになる可能性があります。


 [October 03, 2016]  No 031843504

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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