2分でわかるアメリカ

2016/09/17数字と実感のギャップ

アメリカ労働省が16日発表した8月の消費者物価指数が予想以上に上昇しました。前月比で0.2%、前年同月比で1.1%それぞれ上昇しました。変動が激しい食品やエネルギーなどを除いたコア指数は前月比で0.3%上昇、2月以来の大きな伸びでした。

アメリカの中央銀行に当たるFRBは、インフレ率を2%にすることを目指しています。「雇用が堅調、賃金が上昇傾向、インフレ率はいずれ目標近くに達する見通しだ」と複数のFRB幹部が発言、早期利上げを示唆しました。Reutersは、8月の消費物価指数を受け、FRBの年内利上げを後押しする可能性があると解説しました。

確かに統計だけ見るとそうなると思います。しかし、「利上げに踏み切るほど景気が良くなったか」と聞かれると、「そう思う」と答えるアメリカ人は少ないと想像します。アメリカで暮らしていて、「好景気の実感」がないからです。

ロサンゼルスの街を注意深く観察すると「空き店舗」が予想以上に多いです。増えている可能性もあります。昔行った店舗に行って、「閉店」もしくは「廃業」と書かれた看板にショックを受けたことが複数回あります。

収入がインフレ率以上に増えれば問題がないのですが、そうは思えません。FRBの期待する方向に物価が上がりましたが、内容を見ると、医療費と家賃が押し上げていることがわかります。生活を圧迫しています。15日付のThe New York Timesが「アメリカの幅広い地域の経済が依然として低迷、多くのアメリカ人の生活が改善していない」と伝えましたが、それはアメリカ第2の都市ロサンゼルスにも当てはまります。

スイス人投資家のマーク・ファバー氏は、タイに移住する前、欧米の大手金融機関に勤務しました。その際、ウォール街のエコノミストなどの見解と「街角経済」との格差を強く感じたそうです。その経験から、世界を旅し、自分の目で景況感を見ることを心がけています。ファバー氏が書く投資情報は、エコノミストのコンセンサスや、学者、官僚、そして政治家の見方と大きくずれることがあります。しかし、投資家の多くが参考にするのは、机上で考えたものではないからです。

富豪のトランプ氏と政界経験が長いクリントン氏の2人の大統領候補、もしくはFRBのイエレン議長が、最後にスーパーマーケットで買い物をしたのはいつなのか。聞いてみたいです。


[September 16, 2016]  No 031843493

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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