2分でわかるアメリカ

2016/06/30スコットランドが独自通貨?

先週23日の国民投票でEU離脱を決めたイギリスのキャメロン首相は28日、ブリュッセルで開かれたEU首脳会議の1日目の協議のみ参加しすぐに帰国。29日は、イギリスを除く27カ国で協議しました。イギリスの国民投票は法的拘束がなく、「イギリス政府が正式に離脱を通知するまで待つ」ことで一致しました。つまり、何も決まらなかったということです。

キャメロン首相と入れ替わるように、イギリス北部のスコットランド自治政府のスタージョン代表(首席大臣)がブリュッセル入りしました。EUのユンケル委員長や欧州議会のシュルツ議長と会談、EUとの関係維持を訴えました。

イギリスの国民投票では、スコットランドの62%が残留を支持しました。2014年のイギリスからの分離独立を問う住民投票が否決されましたが、イギリスがEU加盟国だからというのが残留の決め手となったと指摘されています。その前提がなくなった今、スコットランドでは2度目の住民投票を実施する機運が高まっています。

イギリス北部のスコットランドが分離独立し、EUに残留する可能性があるのか。スペインのラホイ暫定首相は早くも反対する立場を表明しました。「イギリスが離脱すれば、スコットランドも去る」と。

ただ、スコットランドの残留の可能性が高いとする見方もあります。投資銀行大手JPモルガンのエコノミストは、顧客向けメモの中で、スコットランドが住民投票で独立を決め、イギリスがEUから離脱する前に独自の通貨を導入するだろうとコメントしました。JPモルガンが描くベース・シナリオだとしています。

スコットランド自治政府のエディンバラに行ったことがあります。なまりが極端に強く、慣れるまで英語を話していることに気がつきませんでした。スコットランド語もあります。大陸に見られる古き良き時代の「ヨーロッパ」がそこにありました。「ヨーロッパの一員」へのこだわりがよくわかります。

イギリス国内では、国民投票で残留支持が多かった他の地域でも独自に留まろうとする動きがあります。イギリス本土から飛び地になっている北アイルランドでは、陸つながりのEU加盟国アイルランドとの統合を求める声が強まっています。ロンドン市のカーン市長は、自治権限の強化をキャメロン政権に求めています。ロンドンはイギリス南部で唯一、残留を支持しました。

世界を驚かせた国民投票は、イギリスを分断に導くきっかけになった可能性があります。一方で、EUから分離することでブリュッセルの官僚主義から解放され、イギリスがより強い国になるとの見方もあります。未来の歴史の教科書は、イギリスの国民投票をどう評価するのか。未知の世界だけに、いろいろなシナリオが考えられます。

 [June 29, 2016]  No 031843440

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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