2分でわかるアメリカ

2016/02/19ビリオネアも、最大被害はアメックス?

アメリカのワインの産地として知られるナパやソノマに近いカリフォルニア州バークレーにある「プレミア・クル」。全米で最も有名なこのワイン商が今月5日、経営破たんしました。2日後の7日、今度はプレミア・クルのジョン・フォックス社長が個人破産を申請しました。

裁判所の記録によりますと、プレミア・クルの資産は680万ドル(約7億7520円)で、債務が7000万ドル(約79億1000万円)。資産のほとんどはワイン。一方、フォックス氏の個人資産はゼロ-5万ドル(約570万円)に対し、債務額は5000万(約57億円)-1億ドル(約114億円)。何かがおかしい。

プレミア・クルは店舗やインターネットで現物のワインを販売するだけではなく、フランス・ボルドーの高級ワインなどの「プリムール」を積極的に売っていました。プリムールとは、いわゆる先物取引。ワインが樽に入っている段階で販売されるもので、消費者に届くのは約2年後です。消費者は注文した時点で全額を支払います。

消費者が前払いしているので、「債務が7000万ドルあっても、プリムールを含めたワインと会社に残った現金も7000万ドル近くあってもおかしくない。変だ。」と専門家がワイン・スペクテーター誌に語りました。前払いされたお金はどこに行ったのか。

FBIは今週までに、プレミア・クルとフォックス社長が、ポンジ・スキームで消費者を騙していた、詐欺ではないかとして、捜査を開始しました。ポンジ・スキームとは、預かった顧客資金を、運用などの本来の目的ではなく、配当など別の用途で使用するもので、日本でいうネズミ講の一種。今回の場合は、プレミア・クルの代金として受け取った資金を、個人や会社の運転資金として使っていた疑いがあります。

プレミア・クルの顧客は9000人。この中には、ウィリアム・コッチ氏やジェフ・グリーン氏らアメリカのビリオネアの他、中国の富豪も含まれています。何年も前に購入したプリムールが届かないといった苦情が去年から急増、11件の訴訟が起こされました。ただ、CNBCは、最大の犠牲者はアメリカン・エキスプレスではないかと伝えました。アメリカン・エキスプレスには、カードで購入した商品が届かない場合に最大で全額を保証する特典があるからです。

ワインが好きで、個人的に何度かボルドーのプリムールを購入した経験があります。本当に届くか、いつも心配でした。これからは、購入するワイン商をより慎重に選ぼうと思います。



[February 18, 2016]  No 031843353

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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