2分でわかるアメリカ

2015/11/18欧米の政治を動かす同時多発テロ

日曜日からロンドンに滞在していますが、テレビや新聞はパリの同時多発テロの続報一色です。地下鉄には普段見かけない警官が目につきます。半旗のユニオンジャックがいたるところに掲げられ、車体の上部にある電光掲示板にフランスの国旗を表示したブラックタクシーを何度も見かけました。同時多発テロ後の独特な雰囲気は、当面続くとみられます。

ところで、イギリスが加盟するEUとNATOの本部があるベルギーのブリュッセルが、パリ同時多発テロの拠点になっていた可能性が浮上しています。

冷戦時代、ベルギーのブリュッセルの西側にあるモレンベーク地区は、東側のスパイの拠点として知られていました。フレデリック・フォーサイスをはじめスパイ小説やハリウッド映画の舞台にもなりました。ブリュッセルに駐在していた22年前、何度かモレンベークを訪れましたが、中東やアフリカなどの外国人が極端に多かった記憶があります。当時、知人のジャーナリストから麻薬や武器の闇市場があると聞きました。今もそれは変わらないようです。同時多発テロの実行犯の一部がブリュッセルのモレンベークに住んでいたことが判明、ベルギーの警察が本格的に捜査をしています。ブリュッセルの住民が大きく動揺していると想像します。

同時多発テロは、ヨーロッパの市民の心理だけではなく、欧米の政治をも大きく変えることになりそうです。

いま議論されているのは「シェンゲン協定」。イギリスを除くヨーロッパ大陸の各国はシェンゲン・ビザを発行、このビザがあればヨーロッパ大陸内を自由に移動できます。しかし、同時多発テロをきっかけに協定が見直される可能性が出ています。

また、ヨーロッパではシリアなどからの難民の大量流入が深刻な問題でしたが、これがテロ対策に完全に変わりました。

さらにもう一つ。ロシアの存在感が大幅に増しました。アメリカ政府は、シリアを拠点にする過激派組織ISISを掃討するためにはロシアの協力が欠かせないと判断、ロシアに急接近しました。トルコのG20首脳会議の会場で、オバマ大統領とプーチン大統領が通訳を入れて密談する映像が欧米メディアで何度も報じられました。また、フランスのオランド大統領はフランス議会で演説、アメリカとロシアに協力を呼びかけました。フランスもロシアに急接近しました。

株式市場や原油市場をはじめ欧米の金融市場は落ち着いているようにみえます。しかし、状況次第では大きく反応することも予想されます。テロの続報に注目していきたいと考えます。



[NOVEMBER 16, 2015]  No 031843293

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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