2分でわかるアメリカ

2015/11/07「4300円で空港荷物検査なし」

海外の厳しい目とは対照的に、ロシアのプーチン大統領は国民の高い支持を得ています。背景の一つに、プーチン大統領がソーシャル・メディアを積極的に利用していることがあると知人のロシア人ジャーナリストから聞きました。

ロシアの航空会社コガリムアビア(メトロジェット)の旅客機が先月31日、エジプト東部のシナイ半島に墜落、乗客乗員224人全員が死亡しました。事故直後に、プーチン大統領は「最も悲しい日」として、犠牲者と家族に対し国を挙げて哀悼の意を表するよう呼びかけました。それ以降、プーチン大統領のソーシャル・メディアでの沈黙が続いています。

この間、イギリスのキャメロン首相が「テロリストが持ち込んだ爆発物が原因の可能性がある」として、エジプト東部のシャルムエルシェイク空港とイギリスを結ぶ便の運航を一時停止する措置をとりました。アメリカの航空会社は同地域を飛ぶ便がありませんが、オバマ大統領は「機内に爆弾があった可能性がある」との見方を示しました。ドイツとフランスなどヨーロッパ各国も、リゾートとして知られるシャルムエルシェイク空港への運航を停止しました。

これに対し、ロシア政府は「エジプトの調査結果を待つべきだ」としてテロ説に慎重な姿勢を貫きました。しかし、ロシア国内では、プーチン大統領の沈黙が続いていることも影響して、「何かがおかしい」「ロシアがISIS(過激派組織)への攻撃をしたことへの報復ではないか」との見方が広がりました。ISISへの攻撃を決めた責任が問われると、プーチン大統領への圧力が強まりました。

事故から1週間後の6日。プーチン大統領は、エジプトとロシアを結ぶ航空機の運航を停止するよう、関係省庁に指示を出しました。テロの可能性を認めた瞬間でした。エジプト東部はロシアの人気の観光地で、日本人にとってのハワイのような存在。妻の両親も過去に10回ほど訪れています。エジプトとロシアの観光業界への影響は必至です。

欧米のメディアは、何者かが空港の保安検査をすり抜け、爆発物を機内に持ち込んだ可能性があると伝えています。イギリス人のツーリストはスカイニュースに対し、「検査官に35ドル(約4300円)を払い、荷物検査が免除された」と話しています。

224人の命を奪った悲劇は、プーチン大統領に対するロシア国民の見方を変え、同時に、世界の空港検査のあり方を見直すきっかけに発展する可能性があります。



 [NOVEMBER 06, 2015]  No 031843287

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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