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2015/08/21通貨安、想像よりも輸出に寄与しない

アベノミクスによる円安誘導、中国人民銀行の基準値算出法変更による通貨・人民元の事実上の大幅切り下げ。いずれも輸出を促進するための措置とされました。

単純に考えれば、ドル建てでモノやサービスが安くなるので、説得力があります。実際、通貨安誘導の背後にいる日本や中国の官僚はそう考えていると思います。しかし、通貨安がかつてほど輸出促進につながっていないという新しいレポートを世界銀行が発表しました。

Financial Timesが詳しく伝えたもので、46ヵ国の経済を分析した結果、通貨安が輸出に寄与する度合いは1990年代半ばと比べ半分程度しかないと結論づけています。経済のグローバル化が背景です。

具体的には、世界最大の輸出国である中国製のスマートフォンのスクリーンは日本製、主要な半導体は韓国製、他の部品は東南アジア、ヨーロッパ、一部はアメリカから輸入しています。輸入に頼る部品の価格が人民元安により上昇するため、効果が相殺されます。サプラインチェーンの多くの部分を外国に頼るため、通貨安の効果が低くなっているということです。

日本も同じことが言えます。円安により、外国から取り寄せる部品の価格が上昇、輸入に頼る燃料価格も上昇するため、期待ほど円安が輸出増につながりません。実際、日本は貿易赤字になっています。

その一方で、通貨安が大きな効果をうむ国もあります。例えばオーストラリア。オーストラリア産のワインが人気ですが、主力のぶどう、シラーもボトルも国内産です。オーストラリアドルの下落により、オーストラリア産ワインの価格がお手頃になります。オーストラリアの主力輸出品は鉄鋼石ですが、通貨安で安く輸出できます。ただ、鉄鉱石に関しては世界的なコモディティ相場の下落の影響を受け、別の理由で輸出が伸びていません。

かつて、マーケットを勉強するため東京の兜町に通ったころ、「東証一部上場企業のほとんどは輸出型企業で、円安は株買いだ」と大手証券会社から教えられました。「兜町の掟」みたいなものでした。円安局面では日経平均株価が上昇することが多く、いまでも変わっていないのではないかと思います。しかし、「掟」を見直すべき時期がきているのかもしれません。

 
[August 20 2015]  No 031843232

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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