2分でわかるアメリカ

2015/06/03「Apple-1」を捨てた未亡人

希少価値の高い古い道具が、買った値段の何倍にもなることがあります。例えば古いスポーツカー。あるいはロレックスの時計。ほとんどの古い道具は「ガラクタ」とされ価値がありませんが、ほんの一部は「ビンテージ」としてコレクターズ・アイテムになるのが面白いところです。

北カリフォルニアにあるリサイクルショップに数週間前、60代とみられる女性が亡き夫の「ガラクタ」をダンボール箱に詰めて寄付しました。価値がないと思ったらしく、レシートも受け取らずに立ち去りました。リサイクルショップのオーナーのビクター・ギチュンさんは箱をそのままにして店の片隅に置いておきました。店内には、ガラクタが詰まった箱が山積みされていました。

整理を進める中で、ようやく女性が寄付した箱をあけました。ギチュンさんは目を疑いました。APPLE COMPUTERと書かれた木製のコンピュータが入っていたからです。調べると直ぐに、1976年にAppleの共同創業者のスティーブ・ウォズニアック氏とロン・ウェイン氏による手作りの「Apple-1(アップルワン)」だということがわかりました。しかも、オリジナルのまま。これは凄い。

ギチュンさんはオークションにかけ、20万ドル(約2500万円)で落札されました。200台製造されたアップルワンの発売当時の価格は666ドル66セントだったそうです。買った人の名前は非公表ですが、コレクターだそうです。ギチュンさんは地元のテレビに出演、シリコンバレーの地元紙のインタビューにも答え、ルールに従って半分の10万ドル(約1250万円)を女性に返したいと語っています。

女性は名前も告げずに立ち去ったため、連絡の取りようがありません。ただ、ギチュンさんは、女性の顔と乗っていたSUVを覚えているため、もう一度会えば直ぐに本人とわかると話しています。きょう時点で、女性はまだ見つかっていません。

コンピュータが普及していない時代の39年前に無名のアップルワンを買っただけではなく、大事に保管したこと、未亡人がガラクタだと思って事実上放棄したこと、儲けたお金の半分を規定通り正直に返したいというショップ・オーナー。なんとなく、いい話ですね。

 
 [June 02 2015]  No 031843176

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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