2分でわかるアメリカ

2015/05/27ドル高のジレンマ

3連休明けの26日のニューヨーク市場でドル高が加速しました。ギリシャ情勢への懸念やドイツ国債利回り低下を受けドル高が進んだロンドン市場を受けた前半の取引では、アメリカの経済指標が強めだったことでドル買いに拍車がかかりました。

背景には、FRBが年内にも利上げに踏み切りそうだとの観測があります。FRBのイエレン議長が連休前の22日の講演の中で「年内の利上げが適当だ」との見方を示しました。さらに、フィッシャー副議長が25日、今後3、4年で短期金利が緩やかなペースで上昇し「ノーマルな」水準に戻るだろうと発言しました。FRBのトップ2が相次いで「近い将来の利上げ」を示唆したことで、利上げ観測が一段高まりました。

過去1、2ヶ月ほど「蚊帳の外」だったドル円は123円台に上昇しました。ドルは幅広く買われ、ユーロやポンドなどのヨーロッパ通貨やオーストラリアドルなどに対しても高い水準で取引されました。

Financial Times(FT)は、世界の中央銀行が、「ドル高基調が戻り、自国通貨安が進むことで景気を刺激するかどうか」状況を注視していると報じました。世界的な低金利の環境下で過去に例がないほど通貨安による景気刺激への依存度が高くなっていると解説しました。

FTのまとめによりますと、去年10月から5月25日の間に、ノルウェークローネは対ドルで15.4%下落しました。また、オーストラリアドルは10.1%、カナダドルは9.1%、ニュージーランドドルは6.1%、それぞれ対ドルで値を下げました。ノルウェー、オーストラリア、カナダなどの中央銀行はいずれも金融緩和を継続していますが、政策金利の引き下げより「ドル高による景気刺激」を好んでいるとFTが指摘しました。利下げはインフレ率を押し上げると同時に、不動産など資産バブルを生み出すリスクがあるからです。さらに、利下げをはじめとする金融緩和措置で通貨安を誘導すると「通貨安戦争」と批判を受ける可能性もあります。「アメリカの都合で」自国通貨安が進むことが好ましいとの考え方です。

一方、ドル高はアメリカの輸入物価を押し下げインフレ率が一段と低下します。また、アメリカ企業の業績にも悪影響を与える懸念が生まれます。ドル高が進みすぎるとFRBが先行きに懸念を示す可能性があり、利上げ時期が後ずれするとの観測が広がると、今度はドルが売られることになります。

ドル相場は、世界の中央銀行と各国の景気、そしてFRBとアメリカ経済の間で、微妙なジレンマを抱えていると言えるかもしれません。

 
[May 26 2015]  No 031843171

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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