2分でわかるアメリカ

2015/05/26TPP合意で一段の円安はあるか

アメリカ連邦議会の上院は先週末、TPPなど貿易協定に関する交渉権限をオバマ政権に与える「大統領貿易促進権限(TPA、通称ファーストトラック)法案」を可決しました。

TPPとは、環太平洋戦略的経済連携協定の略語です。環太平洋地区に属する国や地域の貿易の自由化を目的にした協定。関税の撤廃を目指していると思われがちですが、実際には貿易に関連する幅広い問題に関する合意を目的にしたものです。

アメリカ国内の審議がここまで時間がかかった背景には、民主党議員の一部が、為替操作に対する拘束力のある制裁条項をTPPに盛り込むことを強く求めたことがあります。通貨安を誘導し、輸出を有利にする動きを封じ込めるためです。「通貨安戦争」を懸念した輸出型企業のロビー活動も影響したとみられます。

オバマ政権は、制裁を含めた為替条項を盛り込むことには11ヵ国が反対し、交渉決裂につながる「ポイズン・ピル」になる恐れがあると考えました。かわりにそれほど攻撃的ではない方法で加盟国の為替政策を監視する方法を提案しています。

The Wall Street Journalによりますと、アメリカ財務省が提示した案は、外貨準備高や為替介入に関する詳細など、通貨管理を評価するデータを加盟国が報告、公表するというものです。現在、加盟国の多くがIMFなど国際機関などに対しこれらのデータを提供しておらず、為替介入があった場合、規模などについては推測の域を出ていません。オバマ政権は、透明性を高めることで為替政策に関する外交交渉で強い影響力を発揮することができると主張しています。

大手金融機関のストラテジストの一部は、アメリカ議会のTPPに関する審議が終了するまでは、円安につながる追加緩和を日銀が決められないのではないかとみています。アメリカ議会を刺激しないためです。逆に、審議が終わった場合は、追加緩和に踏み切り、円安ドル高になるとの予想が少なくありません。

ファーストトラック法案は下院に送られました。6月に審議を開始しますが、難航する可能性もあります。仮に、上院に続いて下院も可決した場合、オバマ政権は日本を含めた11ヵ国とのTPP交渉を終え、議会での協定批准の審議が続くことになります。議会での採決は早くても今年秋になりそうです。

アメリカはきょう25日、メモリアルデーで祝日です。明日から「非公式の夏」がはじまります。

 
 [May 25 2015]  No 031843170

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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