2分でわかるアメリカ

2015/03/24戻ってきた「政府機関を閉鎖した男」

オバマケアと呼ばれるアメリカの医療保険改革に強く反発し、2013年の予算法案に対する反対意見を21時間に渡って続けた上院議員がいます。テキサス州出身のテッド・クルーズ氏です。「21時間演説」は、政府機関の一部の閉鎖の要因のひとつとなり、オバマ政権に共和党の脅威を印象付けました。同時に、あまりにも強硬な手法や党の上層部に噛み付いたことなどで、共和党内の反発も招きました。

その異端児が23日、2016年に実施される次の大統領選の共和党予備選に出馬する意向を正式に表明しました。

クルーズ氏は、キューバ系の父親を持つヒスパニック系です。今のアメリカはヨーロッパ系の白人が最も多いのですが、中南米にルーツを持つヒスパニック系が急激に増えていて、いずれマジョリティになると予想されています。オバマ大統領は、ヒスパニックを中心としたマイノリティの高い支持を得て当選したとされていますが、そういう意味で、ヒスパニック系のクルーズ氏は有利と言えます。

しかし、共和党の本命かといえば、そうではありません。クルーズ氏は、出馬を正式表明したバージニア州での演説の中で、オバマケアの廃止のほか、日本の国税庁にあたるIRSと国境警備の廃止、そして同性婚の禁止を主張しました。富の配分の平等化、格差是正の政策にも反対しました。「お金持ちの味方、貧乏人の敵」を強調しました。

クルーズ氏はまた、オバマ大統領を幅広く批判、外交政策については、対イスラエル、イランとの核協議、そして「イスラム国(ISIS)」への対応を激しく批判しました。超保守的思想で知られる「ティーパーティー」の支持を受けていますが、「右派すぎる」「過激すぎる」との批判が少なくありません。

クルーズ氏がなぜ早いタイミングで出馬を表明したのか。The New York Timesは、資金問題が大きいと伝えました。早めに出馬することで、共和党員やティーパーティー支持者から寄付をできるだけ多く集めたい考えです。少なくとも選挙資金を4000万ドル(約48億円)に増やしたいとしています。

FRBが利上げの検討に入るほどアメリカの景気が改善しました。ただ、ほとんどのアメリカ人は、景気回復を実感していません。オバマ大統領が選ばれた金融危機後の2008年ほどではありませんが、現状に不満を抱くアメリカ人が少なくありません。既存の政治を否定するクルーズ氏が、アメリカ人の不満をどこまで汲み上げるかが注目です。ダークホースとはいえませんが、ユニークな存在だと思います。

 
 [March 23, 2015]  No 01056584

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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