2分でわかるアメリカ

2015/02/18混乱極める米医療保険制度

アメリカの医療保険制度改革が始まってから2年目を迎えますが、混乱がおさまりません。今年の保険購入期限は2月15日でしたが、延長されました。コールセンターの対応の遅れや、ウェブサイトの機能が麻痺したことなどが原因です。 多くの地域では月末まで伸びました。延長されたのは、これが初めてではありません。何度も繰り返されています。

医療保険制度改革は「オバマケア」と呼ばれます。オバマ大統領が2008年の選挙の公約に掲げ、2010年3月に大統領が署名して成立したことから名付けられました。具体的には、患者を保護するためのPatient Protection Actと医療費負担を適正化するためのAffordable Care Actの2つの法律をいいます。先進国の中で唯一、国民皆保険制度がないアメリカでは、高額医療で破産に追い込まれる人が多いこと、持病を持つ人が保険会社から加入拒否されることが日常化したことなどから、鳴り物入りで成立した法律です。

法律の趣旨は素晴らしいのですが、実態は「酷い」の一言です。 安くなるはずの保険料は大幅に高くなりました。個人で加入する場合、シングルは日本円で3万円程度、子供2人の家族は10万円以上の保険料が毎月かかる場合があります。低所得者向けの「オバマケア」もありますが、その保険で受診できる医療機関がほんのわずか。多くのクリニックや病院では、保険が適用されません。低所得者向け保険は、医療機関へ支払われる保険金が非常に低いことが背景です。加入にからむ混乱は冒頭に書いた通りです。

なぜこうなったのか。個人的には、導入が遅すぎたのではないか、と思います。アメリカでは自由診療が基本でした。個人は保険に入るのは自由、医師と民間保険会社は患者を選びました。民間の保険会社が民主党と共和党の両方に多額の寄付を続け、強い政治力を持ちました。医療機関への影響力も強めることになり、医師の診断の多くを「必要ない」と拒否することが増えました。こうした歪な構造が長期間続いたため、「オバマケア」は絵に描いた餅になっているのが現状です。

とは言っても、「オバマケア」は法律で、国民は従わざるを得ません。保険に加入していないと、今年から罰金が課せられます。罰金は年を追うごとに高くなります。オバマ大統領の任期は残り2年ですが、任期中に混乱がおさまるとは思えない状況です。歴史的に「オバマケア」は悪法の代名詞になるかもしれません。

 
 [February 17, 2015]  No 01056560

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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