2分でわかるアメリカ

2015/02/14「お金持ちの掟72」隠された世界のマネー

「ウォール街」に象徴されるように、ニューヨークは世界のマネーが集まる大都会です。金融市場だけではありません。不動産への海外マネーの流入が凄いです。 ニューヨークはいま、超高級不動産ブームに沸いています。

The New York Timesは、1年に渡り超高級不動産ブームの裏側を徹底的に調べました。調査はニューヨークだけではなく、西海岸のロサンゼルスなどにも及びました。いったい誰が買っているのか。その調査報道が今週、5回シリーズで掲載されました。非常に興味深い内容でしたので、ご紹介します。

それによりますと、アメリカの高級不動産の半分近くは「shell company(シェルカンパニー)」を経由して買われていました。シェルカンパニーとは、事業実体がなく、実名を伏せる目的などで設立された会社。和製英語の「ペーパーカンパニー」もしくは「ダミー会社」です。

ニューヨークのミッドタウンとアッパーウエストが交差するコロバスサークルに2003年に完成したタイムワーナーセンター。住居棟は、200を超すシェルカンパニーがオーナーでした。37%は外国人。そのうち少なくとも16人は、個人もしくはその個人が支配する会社に自国政府などから何がしかの容疑がかけられていました。

住居棟の74Bは、2010年に25CCST74B LLCという謎めいた法人により1565万ドル(約18億7800万円)で買われました。LLCを辿っていくとヴィタリー・マルキン氏の家族に行きつきました。組織犯罪へ関与した容疑がかけられていてカナダに逃亡したロシアの元国会議員です。

同じフロアーにあるアパートは、ギリシャ人のドミトロス・コントミナス氏が2140万ドル(約25億6800万円)で購入した記録がありました。コントミナス氏は去年、汚職容疑などで逮捕されています。

少し下のフロアーの3つのアパートはSkyline LLCと呼ばれるシェルカンパニーがオーナー。建設業などで財をなした中国人の家族がLLCの出資者でした。その中国人富豪がニュージャージーに所有する建設会社は衛生問題などで処分を受けていました。自国で苦情が多い建設業を営むインド人もタイムワーナーセンター住居棟のオーナーでした。

このほか、ニューヨークのブルームバーグタワーの住居棟の57%、プラザ合意で知られるThe Plazaの69%、ミッドタウンのアイコンになったOne57の77%のオーナーがシェルカンパニーでした。また、ロサンゼルスのビバリーヒルズの豪邸を転売しているマレーシアの首相と関係が深い家族、ニューヨークやテキサス、ユタに複数の不動産を買い漁るメキシコの元政治家などをThe New York Timesが詳しく報じています。

アメリカの不動産業界は、バイヤーのバックグラウンドなどをほとんど確認しないとThe New York Timesは指摘しました。法律上問題がないからだとしています。シェルカンパニーを経由した高級不動産の売買が今後も続くことが予想されます。アメリカは、ニューヨークを中心に「怪しい外国人富豪の巣窟」になっているようです。

 
 [February 13, 2015]  No 01056558

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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