2分でわかるアメリカ

2014/11/04日本人が貧乏になる

日経新聞によると、投資ストラテジストの武者陵司さんが去年11月にアメリカを訪れた際、物価の高さに驚いたそうです。「朝食代が10ドルでも足りない」と。大和総研アメリカでニューヨークに駐在していた1993年。円の対ドル相場は110円前後でいまとさして変わらないのに、朝食は5ドルもだせば十分な腹ごしらえが出来た。その年に帰国した武者氏は東京の物価の高さに驚いたと日経新聞が伝えました。

先月半ばから後半にかけて、日本に合計で6泊しました。このうち3夜は、東京の竹芝にあるインターコンチネンタル東京ベイに宿泊しました。税込みで1泊1万4900円。その時の円相場は107円でしたので、ドル換算で約139ドル25銭。アメリカの「INN」と呼ばれる格安のビジネスホテルとほぼ同じ水準です。ロサンゼルスのインターコンチネンタルは2倍以上します。

ハロウィーンの日に発表された日銀の追加的な金融緩和策で円相場が急落しました。週明けの3日も欧米マーケットで円売りが継続しました。対ドルで一時114円台をつけました。約7年ぶりのことです。この水準で外からみると「日本が安く」感じます。

例えば、グランドプリンスホテル高輪。ネットでスタンダードツインの宿泊料金は1泊あたり消費税込みで1万500円です。114円でドル換算すると92ドル10セント。この値段で泊まれるニューヨークやロサンゼルスのホテルはほとんどありません。泊まれるとしても、大半の人が躊躇するような立地です。吉野家の牛丼並盛りは300円ちょうど。ドル換算で2ドル63セント。この値段で食べられるアメリカのファーストフード店は存在しません。娘の高校のカフェテリアは昼食が5ドルします。新幹線など移動手段は依然として割高だと思いますが、日銀の円安誘導により、東京の物価は先進国の中で飛び抜けて安くなりました。

ハワイのワイキキにあるルイヴィトンやティファニーの去年末の売上高が約2割下がったと知り合いの会計士から聞きました。ワイキキでブランド物を買うのはほとんどが日本人。円安により、日本人の購買力が低下していることを示しています。去年末と比べ、今年は一段と円安になっていますから、今年のハワイの年末商戦は「さんざん」な結果になるかもしれません。

物価高で知られるロンドン、パリ、ジュネーブに日本人が旅行すると、ホテルからレストランまで「物価が日本の倍以上する」と感じるかもしれません。

円相場は中長期的に下落基調が続くとの見方が優勢です。円安誘導は輸出型の日本企業に多大な恩恵があるとされています。しかし、実際には、日本メーカーの多くは製造拠点を海外へ移転、恩恵があるのは一部の企業だけとみられます。原油相場が下がっているのに、円安により値下がり分が相殺されます。先週金曜日に日経平均株価が急上昇しましたが、ドル換算するとほぼ横ばいです。

日本人が貧乏になりつつあるように思えます。「良い円安」から「悪い円安」の領域に入ったとも考えられます。21年前の110円台といまの114円は意味が大きく違います。

 
 [NOVEMBER 03,2014]  No 01056484    

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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