2分でわかるアメリカ

2014/08/26異例の主張「低金利据え置くべき」

週末に髪を切りに行きました。店内は客1人だけ。あと2人いる美容師はアポイントがないらしく、出勤すらしていませんでした。「過去10年でもっと悪い」と美容師が嘆いていました。金融危機後の最悪期から去年は幾分客足が戻ったものの、今年に入り減る一方だそうです。特に今年の夏は最悪で、市内の同業者も同じ状況だと話しています。

美容師の厳しい実感にもかかわらず、雇用統計をはじめアメリカの経済指標が改善傾向を示しています。また、ニューヨーク株式市場では、「大幅な調整」「暴落説」が相変わらずあるものの、底堅い相場展開が続いています。こうした中、アメリカの中央銀行であるFRBが利上げする時期を巡る議論が活発化しています。

ワイオミング州ジャクソンホールで先週開かれた中央銀行年次会合に、世界の注目が集まりました。最も注目されたFRBジャネット・イエレン議長の講演は、利上げの時期に言及せず、やや中立ながらも慎重な言葉が目立ちました。FRB幹部の過半数はイエレン議長と類似したスタンス。その反面、少数ながら声が大きい一部のFRB幹部は、金融緩和の副作用を警戒し、早期の利上げを主張しています。 FRBの利上げを巡る観測に世界のマーケットが揺れています。

こうした中、アメリカを代表する新聞であるThe New York Timesが「政策金利を低く据え置くべきだ」と題した社説を掲載しました。政府の外交や経済政策に意見することはたまにありますが、FRBの金融政策への意見は異例のことです。

この中でThe New York Timesは、成長の回復と雇用はまだら模様で持続可能だとは言い切れない、成長が年率2.3%とまだ弱く、しかも雇用者数や質の高い労働の伸びが弱すぎると指摘しました。さらに、景気回復がはじまった2009年以降、時間あたりの労働賃金が平均で年率1.9%しか増えていないとしています。その上でFRBが低金利を長期に渡り据え置いても経済を押し上げるとの保証はないが、利上げの時期が早すぎれば経済に悪影響を与えることは確実だとの見方を示しました。FRBが早期に利上げすることは政策の失敗になるだろうと主張しました。

社説は、最も読者数が多い日曜版に掲載されました。ニューヨーク連銀のダドリー総裁のほか、イエレン議長も読んだとみられます。ハト派の2人は「援軍」と思ったかもしれません。The New York Timesとライバル関係にあるThe Wall Street Journalは、FRBが来年ゆるやかに政策金利を引き上げるとのシグナルを送りはじめ、株式市場の投資家が意識しはじめたと伝えました。
 
 
[August 25, 2014]  No 0105603

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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