2分でわかるアメリカ

2014/08/20投資銀いらない、歯ブラシ試験が大事

週末のThe New York Timesに興味深い記事が載っていましたのでご紹介します。シリコンバレーと一般的に呼ばれるカリフォルニアなどを拠点にするテクノロジー企業のM&Aに関する記事です。

先進国の中で、金融危機後の景気回復のペースが最も早いのがアメリカだとされています。多くの経済指標が改善しているためですが、大多数のアメリカ人には実感がありません。むしろ悪くなっていると感じている人すらいます。稼ぐ人と稼げない人の差が拡大していることも影響しています。稼ぐ人の代表といえばウォール街の投資家だと思いますが、最近では、シリコンバレーの成功者の方が稼いでいます。その成功者は、企業買収により成長を維持、時価総額を上げ、個人資産を増やしています。

M&Aと言えば、ウォール街の投資銀行が仲介すると相場が決まっていました。しかし、シリコンバレー企業は、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースをはじめとする投資銀行を使わず、社内での「歯ブラシ試験」で大型買収を決めているとThe New York Timesが伝えています。

調査会社のディーロジックのまとめによりますと、今年成立した1億ドル(約100億円)を超すテクノロジー会社による企業買収の69%は投資銀行が絡んでいません。10年前は27%にすぎませんでしたから、投資銀行に頼らないM&Aが大幅に増えたことを示しています。

投資銀行は通常、企業の資産査定をすると同時に、顧客の代理として相手方と条件などについて交渉します。資産査定は伝統的な計算法によるものですが、シリコンバレーの成功者は「ウォール街が将来価値や可能性を読めない」と感じています。高い手数料を支払うより、社内に財務のプロをいれると同時に、成功者の中で議論して将来価値を見極めようと考えはじめました。その象徴が「歯ブラシ試験」です。

どういうことかといいますと、歯ブラシは朝起きたときと寝る前に少なくとも1日に2度使用します。同様に、買収する会社のサービスや商品を毎日必要かどうか、もしくは使う可能性があるかどうかを徹底的に議論します。Googleのラリー・ペイジCEOは早い段階で買収案件の議論に関与し、「歯ブラシ試験」に合格したかどうか尋ねるそうです。

30億ドル(約3000億円)規模のアップルによるヘッドフォンのビーツ買収、そして23億ドル(約2300億円)規模のフェイスブックによるバーチャル・ヘッドセットのオキュラス買収には、いずれも投資銀行が絡んでいません。シリコンバレー企業は、ライフスタイルを変えましたが、ウォール街のあり方も変えようとしています。
 
 
[August 19, 2014]  No 0105599

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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