2分でわかるアメリカ

2014/08/19戦場と化したアメリカの町

治安部隊と住民が激しく衝突。装甲車両が走る音や銃声が聞こえ、催涙ガスや発煙筒の煙で視界がほとんどない。目を凝らしてよくみると、治安部隊は軍隊のようにみえる。ここは、親ロシア派との紛争が深刻化しているウクライナ東部の町か、それともパレスチナのガザ地区、あるいは「イスラム国」が支配したイラク北部の町か。いずれも不正解。アメリカのミズーリ州ファーガソン。セントルイス近郊の小さな町。ここでいま起こっている異常な事態に全米が揺れています。

きっかけは9日に起きました。地元の高校を卒業し、大学進学の準備を進めていた18歳の青年マイケル・ブラウンさんが、注意された警官と口論になったあと射殺されました。青年は丸腰の黒人。警官は白人でした。抗議した黒人の住民が暴徒化、略奪事件も発生、警察隊と激しく衝突しました。だぶついた軍需品が供与され警察が軍隊並みの装備を持っていたことも住民をさらに刺激しました。

抗議デモが激化したため、ミズーリ州のニクソン知事が、非常事態を宣言、夜間外出禁止を発令しました。自然災害や戦争状態を除いて非常事態が宣言されるのは、きわめて異例のことです。14日にいったん落ち着きましたが、射殺された少年が直前に近くのショップでタバコを盗んでいた疑いがあると発表したことで、抗議が再び激化しました。白人警官は容疑をかけられていることを知らずに射殺したことがわかり、「火に油を注ぐ」結果になったのです。

地元の治安部隊で対応できないため、州政府が治安部隊を派遣、FBIも捜査に乗り出しました。マイケル・ブラウンさんの遺体は、連邦政府が2度目の司法解剖をするという異例尽くめの展開に発展しました。初期の解剖では、頭部への2発を含め6発の銃弾を受けていたことがわかりました。

事件の背景には、ファーガソンの歪な社会構成があります。もともとは白人の町でしたが、1970年台から黒人が大量に流入しました。人口の7割は黒人ですが、市長を含めた役所の幹部はほとんど白人。学校の幹部も白人、警官53人中で黒人は3人のみです。白人が支配する構造になっているのです。

抗議行動は、ニューヨークやシカゴ、ロサンゼルスなど全米に広がりました。マサチューセッツにある島のリゾート地マーサズ・ヴィニヤードで夏休み中のオバマ大統領も声明を出し、冷静な対応を呼びかけましたが、情勢不安は収まりそうにありません。人種問題はアメリカの根の深い病巣です。海外に軍事介入するよりも、まず国内の問題解決が先ではないかと、この手の事件が起きる度に思うのは筆者だけではないと思います。
 
 
 [August 18, 2014]  No 0105598

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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