2分でわかるアメリカ

2014/07/23動かない相場と遅れるルール

法案成立の中心になったドット氏とフランク氏の2人の名前からドット・フランク法と一般に呼ばれる金融規制法案にオバマ大統領が署名してから4年。今年4月に施行、法的遵守が来年7月に設定されましたが、大幅に遅れています。

The Wall Street Journalは、条文がまだ半分程度しか完成していないと報じました。特に金融危機の原因となった住宅ローン担保証券、そして商品市場の投機的な投資に関する文言など重要な条文の詰めが終わっていません。条文の修正や追加が繰り返されていて、少なくともあと1、2年。10年かかる可能性もあるとの見方もあります。異例の事態です。

ドット・フランク法全体の詰めが遅れる中、オバマ大統領のブレインだったボルカー元FRB議長が提唱した「ボルカールール」の条文は完成しています。ドット・フランク法の柱の一つになった「ボルカールール」は、金融機関から消費者を守る役割の1400人規模の組織をつくること、そして大手銀行の自己勘定による高リスク商品への投資を禁止するものです。全体が遅れたため、本格的な施行は来年以降に持ち越される可能性が高いとThe Wall Street Journalが伝えました。

法律の施行が大幅に遅れていますが、対象となるアメリカの大手金融機関は既に大きく変わりました。最も大きな変化は、大手銀行がコンプライアンス担当者を大量に増やしたこと、そしてバランスシートを軽くしたことです。さらに、自己勘定で取引する部門を大幅に縮小、多数のトレーダーがリストラされました。先週までに出そろった大手銀行の決算では、トレーディング収入が激減しました。

トレーディング部門はリスクを取らなくなり、レバレッジを引き下げました。ボストン・コンサルティングのまとめでは、28の大手銀行による外国為替、債券、そして商品の売買による去年の収入は1120億ドル(約11兆2000億円)と前年比で16%減少、2010年と比べると23%減りました。売買高の減少とボラティリティの低下は、株式、債券、商品など幅広いマーケットで確認できます。

銀行の変化でボラティリティが低下した結果、高いボラティリティを好むヘッジファンドの取扱高も減少しました。ウクライナやイスラエルでブラックスワンがおきても相場がレンジを出ない背景には、ボルカールールを含めたアメリカの金融規制改革法の影響があるのは間違いないとみられます。法律施行が大幅に遅れていることから、影響は当面続く可能性があります。
 
 
 [July 22, 2014]  No 0105580







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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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