2分でわかるアメリカ

2014/06/17100年の歴史が変わる?

「過去100年続いた中東の国境が変わる可能性がある」。欧米では、こうした論調が増えています。

ISISと呼ばれるイスラム教スンニ派の過激派が支配地域を拡大、シーア派の政府との攻防戦が激しさを増しています。中東戦争、イラン革命、湾岸戦争など中東は戦後何度も危機がありましたが、「市民戦争」に発展したイラク情勢は根の深さと複雑さが際立っています。

中東はかつて600年に渡ってオスマントルコが支配していました。しかし、石油が発見されたことで、状況は一変。第1次世界大戦後、イギリスとフランスが中東を分割する約束をします。いわゆる「サイクス・ピコ協定」です。色分けされた地域はいずれ国家として独立、現在も続いています。しかし、その国境が塗り替えられる可能性が指摘されています。「今回のイラク危機により、国境が大きく変わる可能性がある」と中東問題の専門家であるハース氏がFinancial Timesへの寄稿文で主張しています。

どうしてこうなったのか。長い目では、強引とされた「サイクス・ピコ協定」の影響がありますが、きっかけをつくったのはアメリカとの見方が少なくありません。

2003年、アメリカのジョージWブッシュ大統領(当時)は、サダム・フセイン大統領(当時)が大量破壊兵器を製造しているとして本格的な軍事介入に踏み切りました。続くバラク・オバマ大統領がイラク駐留の撤退を決めるのですが、イラクは安定するどころか、状況は不安定化します。シリア、イラン、トルコなど周辺国が微妙に絡み、状況を複雑にしています。

アメリカの野党にあたる共和党は、イラク政策だけではなく、オバマ政権のシリア、リビア、エジプトなどの中東政策の誤りがイラクの危機を招いたと主張しています。一方、ニューヨーク・タイムズは、ブッシュ政権もオバマ政権も歴史を変える危険さと難しさを甘く見ていたと双方の外交を厳しく論じています。

オバマ大統領は、シーア派のイラク政府を支援するため、無人機による空爆もしくは、空母からの攻撃を計画しているとされています。イランと協調してイラク危機解決を目指す可能性もあります。事態は複雑に、さらに拡大するリスクもあります。

欧米と比べ、イラク情勢を巡る報道は控えめだと思います。欧米では、主要メディアが連日、現地から詳しく伝えています。状況によっては歴史が大きく動く可能性があります。アメリカ外交全体が一段と混迷することも予想されます。石油を中東に依存している日本にも大きく影響することは必至です。
 
 
[June 16, 2014]  No 0105554

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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