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2014/06/06なぜクリッパーズを買ったのか

「会社の値段はあってないようなもの」とM&Aを専門としていた投資銀行家から聞いたことがあります。企業を買収する場合、年間利益の8倍とか10倍とか、もしくは同業者の時価総額を分析するなどして算出されますが、決定的な根拠はありません。買う側と売る側が合意した金額が会社の値段ということになります。

マイクロソフトのCEOを退任したばかりのスティーブ・バルマー氏が、ロサンゼルスを拠点にするプロバスケットチームのクリッパーズを20億ドル(約2000億円)で買うことに合意しました。クリッパーズのオーナーであるドナルド・スターリング氏が「黒人差別問題」でNBAから永久追放されるというスキャンダルがあったばかりですが、畑違いのバルマー氏が信じられない高額で購入することが明らかになると、話題はそちらのほうに移りました。

ちなみに、エコノミストのアンドリュー・ジンバリスト氏によりますと、クリッパーズの価値は5億1200万ドル(約512億円)しかないそうです。人気が高いレイカーズや大リーグのドジャーズならともかく、バルマー氏が提示した20億ドルは「高すぎる」との意見がネット上にあふれています。

フォーブス誌は、テレビの放映権が年間5000万ドル(約50億円)で、バルマー氏が投資を回収するのに40年かかると指摘しています。ただ、バルマー氏の個人資産は200億ドル(約2兆円)あるので、そもそも利益を出す必要がないのかもしれない、とコメントしています。

スティーブ・バルマー氏は、2008年にスーパーソニックというチームが買収され、マイクロソフト本社があるシアトルからオクラホマに本拠地が移ったことに失望、バスケットボールチームの買収を模索していました。バルマー氏は引退しているため、クリッパーズの買収後は、ロサンゼルスに引っ越す可能性がありそうです。バルマー氏は、大のバスケファンだった、ということだと思います。

マイケル・ジョーダン氏らバスケット・ボール界の大物は、バルマー氏の買収を歓迎しています。バルマー氏が値段を大幅に引き上げたため、他のチームのオーナーも喜んでいると思います。

ところで、今回の買収は約1週間で決まりました。この手の大型の買収には、通常100ページを超す契約書が作成されます。バルマー氏はほとんど読まないで署名した可能性があります。バスケファンの富豪による買収を巡る話題は、今後も増えそうです。
 
 
 [June 05, 2014] No 0105547

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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