2分でわかるアメリカ

2014/04/03面白い!地図から消えた町

ロシア人の妻の両親は、モスクワ郊外のアジンソバという名前の町に住んでいます。実はこの地名、昔の地図で探すことは不可能です。なぜなら、あるはずの場所にないからです。冷戦下の旧ソビエト時代、アジンソバはソビエト軍の軍人が住む町でした。安全保障上の理由で、旧ソビエト政府が発行する地図から削除、アメリカをはじめ海外の地図にも当然ながら記載されませんでした。最新の地図には記載され、世界中の人が存在を知ることになりました。

一方、冷戦時代に地図に記載されながら実際には存在しない町がアメリカにあります。ニューヨーク市から約300キロ北にあるAGLOE(アグロエ)と地図に記載された町です。地図上ではロックランドとビヴァーキルという町の間に位置するのですが、舗装されていない道路しかありません。いまも昔もそうです。なぜ、存在しない町が地図にのっているのか。

時代は80年前にさかのぼります。ジェネラル・ドラフティングという会社が地図を作成したのですが、責任者のオットGリンバーグ氏と助手のアーネスト・アルパーズ氏が、自分の名前のイニシャルであるOGLと EAを並び替えてAGLOEという仮想の地名をつくりました。そして、自社の地図にのせてしまったのです。

ジェネラル・ドラフティング以外にも地図を作成した会社がありました。ランド・マクナリーという会社もそのうちの1社。その地図にもAGLOEという地名が記載されていました。「コピーした」としてジェネラル・ドラフティングが訴えたのですが、なぜか、「AGLOEジェネラル・ストア」という名前の雑貨屋があり、無罪判定が出ました。架空の町を店の名前にした人がいて、裁判の判断材料になってしまったのです。

店はなくなり、何十年も経過します。そして2014年。つまり、今年です。架空の町AGLOEが、グーグル・マップで表示されることがわかりました。NPRやニューヨーク・タイムズが報じたことで、話が大きくなりました。そして、先週、グーグル・マップからAGLOEが突然、削除されました

存在しながら地図に表記されなかったロシアのアジンソバ。そして、存在しないのに地図にのっていたAGLOE。世の中には、興味深いことが多いですね。
 
 
[April 02, 2014] No 0105503

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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