2分でわかるアメリカ

2013/12/24「秘密のチャンネル」


「ロシアはブレジネフの時代のようだ」。ロサンゼルスに住むロシア人の友人がつぶやきました。彼が青春時代を過ごした1970年代から1980年代前半のロシアでは、オスタンキノと呼ばれた公営テレビの主要ニュースは、ブレジネフ書記長(当時)に関するニュースだけでした。オスタンキノの現代版「チャンネル・ワン」の夜のニュースはいま、プーチン大統領に関するニュース一色です。

週末のチャンネル・ワンを含めたロシアの主要テレビのニュース、そして欧米の主要メディアは、プーチン政権を批判し10年間に渡り投獄されていた元石油大手ユコス社長のミハイル・ホドルコフスキー氏の恩赦を巡るニュースがトップを飾りました。ホドルコフスキー氏が逮捕された2003年時点の個人資産額は150億ドル(約1兆5000億円)とされていました。脱税などの容疑がかけられたのですが、プーチン大統領にとって余りにも大きな存在になり過ぎたとされていました。

ホドルコフスキー氏への恩赦の裏には、冷戦時代の1960年代に構築された「秘密のチャンネル」がありました。旧ソビエト現在のロシアと西側諸国が水面下で交渉する外交チャンネルです。今回の主役はドイツのゲンシャー元外相。過去2年半に渡り、プーチン大統領と2度会談した他、主要なプーチン政権の要人と極秘裏に交渉を続けました。人権問題を重視するドイツのメルケル首相は旧東ドイツ出身、ゲンシャー氏は東西ドイツ統一時の外相です。

 釈放されたホドルコフスキー氏は直ぐにロシアを出国、ゲンシャー氏らの出迎えを受け、ドイツ・ベルリンに到着しました。冷戦の象徴であるベルリンのチェックポイント・チャーリーで公の場に初めて姿を見せ、政治活動やビジネスには今後関与せず、ロシアの政治犯釈放などの活動に取り組む姿勢を明らかにしました。 

ホドルコフスキー氏の恩赦は憲法制定20年に合わせたものとされていますが、ソチで2月に開催される冬のオリンピックを前に、プーチン政権が「人道を重んじるロシア」「法治国家ロシア」を演出したものと指摘されています。23日には、女性パンクバンド「プッシー・ライオット」のメンバー2人も恩赦で釈放されました。「プッシー・ライオット」は大聖堂で反政権ソングを歌い投獄されましたが、国際的な批判を浴びていました。

[DECEMBER 23 , 2013] No 0105436

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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