2分でわかるアメリカ

2013/11/01番外編:1兆円のドル送金とタンス預金


前日に続いてベトナム編。

ビバリー・ヒルズのリトル・サンタモニカ通りにあるクラスタシアン。カニ料理とガーリック・ヌードルの高級ベトナム・レストランです。1971年にサンフランシスコで創業、ビバリー・ヒルズ店はセレブの定番レストランになりました。

クラスタシアンのオーナーシェフのアンさんは、中越戦争やベトナム戦争前後にアメリカやカナダに渡った「越僑と呼ばれるベトナム人です。越僑は世界に400万人いると推定されています。特に、アメリカ・カリフォルニア州のオレンジ・カウンティに多く、リトル・サイゴンと呼ばれるコミュニティがあります。アン・ファミリーのように事業で成功したベトナム人も少なくありません。

ベトナム財務省は、今年度の財政計画で、816兆ドンの歳入を見込んでいます。日本円に換算すると約4兆円です。一方、越僑によるベトナムへの送金額は年に約1兆円もあると推定されています。歳入の4分の1に相当する規模。海外に在留する越僑が親族などにドルを送金しているものです。ベトナムの外貨準備高は輸入の1.5ヶ月分しかないのですが、巨額の外貨が民間に流れています。

ベトナム経済を語る上でもう1つの特徴的は金です。ベトナム通貨ドンへの不信感を背景に、伝統的に金が代替通貨として取引されてきました。個人の取引が活発で金が高騰、国内価格が国際価格を大きく上回る状況が続いていました。中央銀行であるベトナム国家銀行は去年5月、金地金の製造や金原料の輸出入を独占的に管理することを決めました。しばらく安定していたのですが、今年に入り国内価格が再び上がり始めました。10月末時点のベトナム国内価格は、国際価格を200ドル近く上回る異常な事態になっています。ドンを金そして米ドルに交換してタンス預金する。これがベトナムでは一般的です。

最後に、ベトナムは公務員の給料が低いため、賄賂が日常茶飯事になっています。欧米や日本で、公務員に対する贈収賄防止法が施行されたため、賄賂が減ってきているとの指摘がありますが、ベトナム人女性に聞いたところ、交通違反した際は1000円程度を払って見逃してもらっていると話していました。裁判官もお金で買えると言う人もいました。汚職指数ランキングではベトナムは世界123位。80位の中国より汚職度が高く、172位のミャンマーよりクリーンに位置づけられています。

越僑のドル送金、金のタンス預金、そして汚職が、ベトナム経済を語る3つのキーワードです。4つ目のキーワードを挙げるとすると、社会主義だと思います。ドイモイ政策で市場経済が広がり、ベトナム人は社会主義国家であることをあまり気にしていないように感じます。30度を超す熱帯性気候が影響しているのでしょうか。特にホーチミンの繁栄は訪問者に強いインパクトを与えます。

[OCTOBER 31 , 2013] No 0105399

※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

NOTE

このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。

Market Editors
【データ提供】

PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

バックナンバー

  • 2019.04.23 更新不動産低迷、シドニー、ロンドン、ニューヨークオーストラリアの住宅価格の下落が顕著です。西端のパースはピークから18%下落。最大都市シドニーは14%ダウン。メルボルンの住宅価格は10%下げました。供給過剰、…
  • 2019.04.20 更新ビバリーヒルズ90210に住む、いくら必要アメリカ人の一部の間で「50/30/20ルール」という指針があるそうです。手取り収入の50%は必要経費。住宅ローンや家賃、食料品、ガソリンや公共料金、保険など生…
  • 2019.04.19 更新外為は通常で株は休場、わかりづらい祝日祝日は祝日。日本人なら誰でもそう思います。アメリカは違う。連邦政府が祝日に指定しているのに、地域によって休みにならないことがあります。逆に、連邦祝日ではないのに…
  • 2019.04.18 更新アメリカが報じない日米交渉日米両政府が15日と16日の2日間に渡ったワシントンでの閣僚級の貿易協議を終えました。農産物と自動車を含む物品貿易の議論を先行、データ貿易も交渉に含めることで一…
  • 2019.04.17 更新勝てるかも、米大統領候補の新星2016年11月の大統領選でトランプ大統領が大方の予想に反して勝利したのは、アメリカ人が「変化」を求めていたからではないか。個人的にそう思います。当時、民主党の…

「日刊2分でわかるアメリカ(2分でアメリカがわかる)」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ