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2013/09/28「常識シリーズ50」安倍晋三と半沢直樹


米東部時間9月25日午後4時。安倍晋三首相がニューヨーク証券取引所を見下ろし、笑顔でクロージング・ベルを鳴らした。6月のロンドン、7月のシンガポールに続く世界のマネーセンター訪問だ。短い演説もした。映画「ウォール・ストリート」の有名な台詞を言い換え「Buy My Abenomics(アベノミクスは買いだ)」と力説した。

今回の訪問は国連総会への出席に合わせたもので、同時期に訪問したイランのロウハニ大統領とシリアの化学兵器に関する安保理決議に注目が集まり、欧米メディアが安倍首相の訪問を取り上げることはなかった。踏み込んだ発言、日本が変わったことを示す新しい要素が無かったことも影響している。「主役の1人」と報じた日本メディアがあったが、そうした感覚はない。しかし、一定の存在感を示した。

その1週間前。安倍首相は、東京のホテルでメリルリンチ証券が主催した投資家向け会合の参加者に「Clearly, Japan is now a Buy (明らかに今の日本は買いだ)」とのメッセージを文書で送った。メリルリンチはイベントを10年前から開催しているが、過去最高の500人近い外国人投資家が出席した。ウォール・ストリート・ジャーナルは、「投資の判断材料として思いつかないような寿司や地下鉄に至るまであらゆるものを挙げ、懐疑的な見方をする投資家に日本市場の魅力を説いた」と伝えた。

安倍首相は、久しぶりに登場した「顔と名前が一致する」リーダーだ。「アベノミクス」もブランドになった。「ソニー」や「パナソニック」などのブランド力が急低下した一方、「アベノミクスはいま最も注目を集める日本ブランドかもしれない。トップ・セールスマンとして世界の投資家に接する安倍首相への注目度は高い。

安倍首相の日本国内での支持率も高い。しかし、問題はいつまでブランド力が続くかだ。政府の巨額借金、進まない大震災の復興と放射能汚染、少子高齢化など難しい問題が山積している。残念なのは、アベノミクスが日本の構造的問題を変えるところまで踏み込んでいないことだ。TBSの「半沢直樹」が記録的な視聴率だったのは、非条理な会社社会主義や官僚大国に挑んだ主人公に共感を呼んだからではないか。高い支持率と安定政権のいまが、構造問題にメスを入れるチャンスだ。「失われた20年」を「倍返し」して欲しい。

 旧ソビエトのミハイル・ゴルバチョフ元大統領は、現役時代も退任後も外国では高く評価されたが、国内の評価は低かった。冷戦を終わらせたが、ソビエトを崩壊させ、極端な経済混乱を招いたからだ。将来、「アベノミクス」というブランドが成功の代名詞になるかどうかは、首相のリーダーシップにかかっている。 

「日本の常識は世界の非常識」シリーズは今回をもって終了します。来週の金曜日からは、世界の富豪を多角的に取り上げるシリーズを掲載します。

[SEPTEMBER 27, 2013] No 0105374

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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