2分でわかるアメリカ

2013/08/20縁故採用の境界線


「縁故採用」は日本では珍しくありません。大手企業や大手広告代理店、放送局などには政界の重鎮や財界幹部の子弟の多くが「縁故」で採用された例をよく聞きます。実際にそうした人を多く知っています。それがいいかどうかは別にして、日本では「縁故採用」が、一種のビジネスモデルになっている部分が少なからずあると思います。

 アメリカにも「縁故採用」はあります。特に大口の顧客の子弟がウォール街で採用されるケースを時々聞きます。ただアメリカでは、「関係者同士の不公平な取引」や「賄賂に近い縁故採用」には厳しい対応が取られます。 

週末のニューヨーク・タイムズの調査報道が話題になっています。世界に類を見ない強大な権力を持つ証券取引委員会(SEC)が、大手金融機関JPモルガン・チェースの縁故採用について水面下で捜査しているという記事です。

JPモルガン・チェースは、中国の銀行監督当局の幹部の息子を採用、その幹部が公営金融コングロマリットの会長になり、数多くの仕事がJPモルガン・チェースに発注されたとしています。子会社の上場案件も含まれていたということです。

さらに、JPモルガン・チェースの香港支店は、中国国営の鉄道グループ幹部の娘を採用しました。採用した時期は、鉄道グループが新規株式公開の準備を進めている時期に重なっています。その後、鉄道グループは、JPモルガン・チェースの協力を得て2007年に株式を公開50億ドル(約5000億円)を調達しました。

JPモルガン・チェースの中国政府幹部の子弟に絡む採用戦略の全体像を掴んでいないようですが、SECは、JPモルガン・チェースが政府関係者の子弟を内部に取り込み中国でのビジネスを有利に進めていたとみて捜査中だとニューヨーク・タイムズは伝えています。縁故採用の境界線を越えた可能性があります。

2012年に、モルガン・スタンレーの中国拠点の幹部が賄賂罪で有罪判決を受けています。これを除くと外国の賄賂に関連づけたSECの捜査は異例とも言えます。中国政府の子弟を巡る縁故採用はウォール街全体に広がっている可能性があり、捜査が拡大することも予想されます。

[AUGUST 19, 2013] No 0105347

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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