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2013/08/10「常識シリーズ43」日本の異質が大事


富士山が世界遺産登録に内定した。日本全体が沸き、メディアが大きく何度も取り上げた。外国からの訪問客が増え、大きな経済効果が期待できるとされている。本当にそうか。

そもそも世界遺産とはなにか。1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づき認定されたもの。登録が世界で最も多い国はイタリアで47件、スペインの44件、中国、フランス、ドイツが続く。ヨーロッパが圧倒的に多い。日本は14位の16件、富士山は17件目の登録になる。

3500近くの美術館と博物館、そして2000以上の遺跡を持つイタリアで「世界遺産」を気にする人はいない。古代ローマ帝国の文化遺産が多く残るローマ歴史地区。ダビンチ、ボッティチェリ、ミケランジェロの3大巨匠の作品が多いフィレンツェ。ガリレオ・ガリレイの故郷ピサのドゥオモ広場など。いずれも世界遺産だが、仮にそうでなくても世界から観光客が来る。

ただ、経済効果は思ったほど少ない。PWCの調査では、イタリアの世界遺産による経済効果は想像以上に小さい。イタリアの半分以下の文化遺産しか持たないアメリカは、イタリアの文化施設の16倍もの収入を得ている。世界遺産=経済効果とは言いきれないことがわかる。

富士山が世界遺産になったから外国人の訪問客が大幅に増えるとは思えない。欧米人にとってイタリアは「パンとワイン」「キリスト教の文化」「ヨーロッパの生活スタイル」などのルーツ、類似性を感じる。これに対し日本は特殊で異質な国だ。「武士道」「仏教と神道」を理解するのは、日本人がキリスト教文化を深く理解できないのと同様に難しい。しかし、その異質さに欧米人は高い興味を抱く。

世界遺産に選ばれなかったが、鎌倉が外国人にフレンドリーになり、侍文化が体験できれば外国人観光客は大幅に増える。英語が通じる高級旅館が都心にあったらどれだけ高くても欧米のビジネスマンや資産家は間違いなく泊まる。メニューに日本酒が充実していて、英語で詳しく解説されていればアメリカ人の知人を必ず連れて行く。

「世界遺産」などの権威に頼るのではなく、欧米人から見た日本の異質さをあえて強調することが「観光立国」の鍵ではないか。


    
[AUGUST 09, 2013] No 0105340

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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