2分でわかるアメリカ

2013/08/03「常識シリーズ42」伊のドラマ制作費は日本の倍


イタリアのテレビの視聴世帯が最も多い夜の時間帯には、アクション系のドラマが何本も放送される。昨夜は国営のライ1とライ2、それにベルルスコーニ元首相が経営するメディアセット5の主要チャンネルがいずれも刑事物のドラマを放送した。

ドラマは、カーチェイスあり、アクションあり。お金をかけていることがわかる完成度。実際にイタリアの平均的なドラマ制作費は日本円に換算して約7000万円から8000万円。アメリカのネットワークテレビの制作費の4分の1に過ぎないが、日本の民放の制作費3000万円から4000万円の2倍以上だ。

経済規模は日本の方が大幅に大きいのに、イタリアの制作費はなぜ高いのか。理由はいくつかある。

イタリアのドラマは放送局ではなく外部の制作会社がつくる。著作権も制作会社が持つ。国内の放送権を主要局に販売、制作費の8割程度を回収する。同時に、外国の放送局にも放送権を売る。ドラマがヒットすると、第2シーズンは値段を倍にしても放送局が買うから儲かる。だから、高い制作費をかけて「良い作品」をつくる。いわゆるハリウッド方式だ。放送局はプラットフォーム、ドラマ制作は外部の制作会社という分業方式。

これに対し、日本の放送業界は独特だ。実際にドラマをつくるのは制作会社だが、すべての権利は放送局が握る。制作会社は「下請け」の位置づけ。放送回数は原則一回のみ。BSなどでの再放送も増えたが、構図は変わらない。タレントや脚本家との契約や音楽関係の権利処理が不完全で、海外に売る際に問題になる。文化があまりにも違うので欧米で日本のドラマは売れないが、アジアでも売れない。海外での売上が見込めず、契約処理のコストもかけていないため、日本のドラマの制作費はイタリアの半分になる。

ドラマの制作を巡る日本とイタリアの違いは、家電業界に似ている。アップルをはじめとする米国シリコンバレーの企業はいずれも工場を持たない「ファブレス企業」。台湾のTSMCなど製造専門会社に委託する。これに対し、日本のメーカーは開発から製造・販売までする垂直統合型。だから競争にならない。

 クールジャパンとして番組の輸出などを成長戦略のひとつに挙げているが、放送業界の構造改革が先ではないか。 

[AUGUST 02, 2013] No 0105335

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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