2分でわかるアメリカ

2013/07/20「常識シリーズ40」チャイニーズは日本行かない


 今月6日にサンフランシスコ国際空港で着陸に失敗したアシアナ航空214便には141人の中国人が搭乗していた。搭乗客のおよそ半分。死亡した3人も中国人の高校生だった。なぜ韓国の飛行機にこれほど多くの中国人が乗っていたのか。 

背景には、中国の国営航空会社の路線拡充が需要に追いついていないことがある。中国経済は2000年から2010年の10年間で約3倍に拡大した。それを上回るペースで海外に旅行する中国人が増えている。中国政府系シンクタンクの調査では、海外渡航した中国人は今年9000万人に達する見通し。1億人に達するのは時間の問題だ。国内発の直行便が少ないため、アジアのハブ空港である韓国のインチョン空港を経由して北米に向かう中国人が多い。

中国人旅行客は各国にとってドル箱だ。去年1年間で中国人観光客が消費した総額は1020億ドル(約10兆2000億円)に達した。米国人やドイツ人、日本人よりも多い過去最高額。ニューヨーク5番街やカリフォルニアのビバリーヒルズの高級ブティックには中国語を話す店員が必ずいる。日本語を話す店員はもういない。3年ぶりに訪れたマンハッタンには目立って中国人が増えた。カリフォルニア州は、中国人観光客を誘致するため北京と上海に事務所を開設した。

欧州でも中国人は最も重要な客人だ。フランスには去年8300万人の外国人観光客が訪れたが、その内の23.3%は中国人だった。ロンドンとローマに旅行する中国人も多く、ブランド品を買い漁っている。シャネル、グッチ、ルイ・ヴィトンはいまや中国人なくして商売が成り立たない。欧州で販売された高級品の約6割を中国人が買ったという統計がある。

地理的に近いアジアにも中国人観光客が目立って増えた。韓国観光公社によると、韓国を訪れた中国人の数は去年283万人に達した。10年前の5.3倍に増えた。今年は380万人に達する見通し。韓流ブームの日本人観光客を大幅に上回る。タイを訪問する中国人の数も日本人を上回った。

世界で大きなお金を落とす中国人観光客の数が唯一減少しているのが日本だ。日本政府観光局の統計では、今年5月に訪日した中国人は8万1600人。前年同月比で27.2%も減った。年初からの5ヶ月間の訪問者数も28.2%減少した。背景には、尖閣諸島をめぐる緊張した関係がある。歴史が絡む複雑な問題。しかし、それだけではない。近隣の日本を訪問した中国人が観光慣れし、地理的に遠い欧米を目指す人が増えたこともある。欧米に留学する中国人が急増している一方、日本に留学したい中国人は減少の一途。日中の緊張関係が続く中、世界の中国人の重要性は日に日に増している。

[JULY 19, 2013] No 0105325

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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