2分でわかるアメリカ

2013/07/02ウェンディ・デイヴィスって誰?


「WENDY DAVIS」とグーグルで検索すると4億5100万件がヒットします。先々週までは同姓同名の脇役俳優は聞いたことがある人はいても、政治家「ウェンディ・デイヴィス」を知っている人はいませんでした。テキサス州の限られた地域か、よほどの地方政治マニアは別として。

FILIBUSTER(フィリバスターと発音)」もアメリカ人の多くが聞き慣れない単語でした。議会の専門用語で「議事進行妨害」などと訳されます。フィリバスターの歴史は長く、古くは紀元前のローマ帝国時代、アメリカでは1850年代に記録されています。反対する法案を阻止する政治手法として過去に何度か欧米議会で実行されました。

先週水曜日26日、テキサス州の上院で、妊娠20週以上の中絶を規制する法案が審議されました。法案に反対するウェンディ・デイヴィス議員は11時間に渡り反対意見を述べ続け、法案審議は時間切れで失効しました。トイレも行かず、座り込むこともなくしゃべり続け法案通過を阻止したのです。近代のアメリカ政治で最も成功したフィリバスターと言えます。

ニューヨーク・タイムズをはじめとする全米の主要紙がトップ級で報じ、ネットワーク・テレビのニュースを独占しました。日本ではほとんど報じられていませんが、ウェンディ・デイヴィスさんは、アメリカで最も注目されるスーパースターです。  

ワシントン・ポストは、「ウェンディ・デイヴィスって一体誰?」という記事を掲載しました。14歳のときに両親が離婚、長女だったウェンディさんは3人の妹の世話を強いられました。19歳のとき自らもシングルマザーとなりました。苦労して大学を卒業、その後にハーバード大学の法律大学院で学びました。シングルマザーの苦労も法律も熟知しているウェンディさんのバックグラウンドが今回の偉業の背景にあります。ルックスの良さも人気を後押ししています。

11時間に渡るフィリバスターに備えウェンディさんが履いていたミズノ製の「ウエーブ・ライダー16」というランニング・シューズは、「アメリカ人の熱意のシンボル」になり、アマゾン・ドット・コムのベストセラーに躍り出ました。日本のミズノにとっては「ウェンディ・デイヴィス特需」になりました。

先週通過が阻止された「避妊規制」法案は、きょう1日から再審議されることになりました。ウェンディさんへの圧倒的な支持があり、先週の審議とは状況が異なるため、法案の行方は予断を許しません。

ウェンディ・デイヴィスさんは民主党。2016年の大統領選挙には、ヒラリー・クリントン前国務長官が初の女性大統領を目指して民主党から立候補するとみられています。もしかして、ウェンディ・デイヴィスさんがダークホースになるかもしれません。

[JULY 01, 2013] No 0105311

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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