2分でわかるアメリカ

2013/06/26高速取引とデータ


日本の月例経済報告や白書など省庁が発表する報告は、閣議決定される前日に担当省庁の記者クラブで配られます。文書の上部には「閣議後解禁」「○日○時○分解禁」などと赤字で書かれています。「エンバーゴ付」と呼ばれます。担当課長らが内容をブリーフィングすることもあります。マーケットに影響する報告書やデータが主要メディアに事前に配られているのです。

政府だけではなく、大手企業の調査なども事前配布することが日常的にあります。事前に内容を聞いた記者は予定稿を書き、解禁時間直後に掲載、もしくは放送します。

アメリカにも類似したことが少なくありません。FRBのバーナンキ議長の講演の原稿などが「エンバーゴ付」で配布されることがあります。一部の経済データもそうです。アメリカの民間調査機関のコンファレンス・ボードは、毎月発表する景気先行指数を公表前にメディアに渡していました。過去形で書いたのは、コンファレンス・ボードは事前配布を取りやめることにしたからです。

CNBCは先月28日、コンファレンス・ボードのデータが公表される4分の1秒前に株式市場などで異常に売買高が膨らむ動きがあったと報じました。たった4分の1秒ですが、コンピュータを使った高速取引であれば大量の注文を処理することが可能性です。つまり、データが漏洩、そのデータで利益を得ていた投資家がいた疑いがあるということです。

コンファレンス・ボードは情報漏洩を否定していますが、疑いがあることを嫌い、事前配布を取りやめることを決めました。

一方、ロイターは意識的にデータを優良顧客に事前に渡しています。マーケットの材料となるミシガン大学がまとめた消費者心理を統計化したデータは「ロイター・ミシガン大学消費者信頼感指数」と呼ばれます。ロイターがミシガン大学にお金を払って冠をつけているのです。データは、発表日のアメリカ東部時間午前10時に公表されるのですが、ロイターは一部の有力顧客に対し午前9時55分にヘッドライン、つまり主要な数字を渡していました。さらに最優良顧客に対しては2秒前つまり午前9時54分58秒に情報を渡していたことがCNBCの報道で明らかになりました。

 アルゴリズムを使ったコンピュータ高速取引が相場をボラタイルにすることが最近目立ちます。トレーダーが情報を誰よりも早く入手し大きなポジションをとることなどが背景です。一般の個人投資家に不利な環境になっているような気がします。 

[JUNE 25, 2013] No 0105305

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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