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2013/06/15「常識シリーズ35」市場は正しいか


 「市場は常に正しい」。ウォール街のトレーダーが語った。市場は常に先を読み、実体が後でついてくると力説した。歴史的にみると、確かに株式相場は実体経済を半年から1年程度先行している。 

しかし、間違うこともある。「バブル」という言葉に象徴されるように相場は極端な水準に振れることがある。17世紀にオランダで起きた「チューリップ・バブル」以来、世界の市場は何度も「Irrational Exuberance」を繰り返してきた。FRBのグリーンスパン元議長が1996年のニューヨーク株式相場の高騰に警鐘を鳴らした際に使った言葉。日本語では「根拠なき熱狂」と訳される。

日本通で知られる米コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授は「過去4ヶ月の日本には、アベノミクスへの根拠なき熱狂があった。いまは過度の失望がある」とウォール・ストリート・ジャーナルに語った。

去年末に安倍内閣が誕生以来、円安が急激に進み、日経平均株価は約80%急騰した。発足して7カ月目、安倍首相の成長戦略と追加緩和を見送った日銀への失望による「巻き戻し」で混乱した。

「アベノミクスは死んだ」と誰もが思った。市場関係者が参考にするチャートでは、日経平均株価は下落基調を示すベア(弱気)の領域に入った。円の対ドル相場は一段高を示唆している。ただ、結論づけるのは時期尚早かもしれない。

ワシントン・ポストは「日経平均株価は依然として半年前より高く、円相場は安い水準にある」と指摘。その上で、アベノミクスが成功するかどうかは一日のマーケットの動きで決まるものではなく、政策が実体経済にいかに効果をもたらすかにかかっていると解説した。

フィナンシャル・タイムズは日経平均株価が急落した13日の社説で、労働市場の柔軟性の欠如や保護された農家の反発を指摘した上で、日本の方向は安倍氏次第として構造改革の必要性を主張した。

「根拠なき熱狂」で極端な水準になった相場はいずれ適正水準に修正される。歴史が物語る。長い視点では「市場は正しい」とするトレーダーの見解は正しい。アベノミクスを巡る大混乱は日本独自のものだが、世界への影響も小さくない。世界3位の経済大国の熱狂が「根拠ある」ものなのか、欧米が冷静に注視している。

[JUNE 14, 2013] No 0105297

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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