2分でわかるアメリカ

2013/06/01「常識シリーズ33」止まぬ反日


2007年1月、米国ユタ州のパークシティで開催されたサンダンス映画際。俳優のロバート・レッドフォード氏がインディペンデント映画を支援する目的ではじめた世界的に有名な映画祭だが、開催前に日本政府が神経質になっていた。HBOが出資したドキュメンタリー映画が公開されるからだ。

映画のタイトルは「NANKING」。公開のちょうど50年前の1937年、南京を制圧した日本軍が捕虜や市民などを大量虐殺したとされる「南京事件」を、目を覆いたくなる生々しい映像や元日本兵らのインタビューで描いたドキュメンタリー映画だ。アメリカ人の俳優が語りかけるつくりで完成度が高い。上映された5回いずれも満席で、上映後はスタンディング・オベーションが起こった。映画を観た誰もが「日本人は残酷」との強い印象を受けた。

「NANKING」はその後、ベルリン、香港、カンヌの映画祭でも公開された。中国や台湾で一般公開された。テレビの世界的賞であるエミー賞のドキュメンタリー部門賞に選ばれた。他5つの賞も獲得した。中国政府が主張する「20万人虐殺」は誇張だと主張する日本政府にとって悪夢が続いた。

中国では反日をテーマにした映画やテレビドラマが人気だ。ロイターによると、日本人兵役の23歳の男優はちょっとしたセレブになっている。残虐に殺害されるからだ。中国人は「日本人が殺されるのは当たり前」と考える。反日映画は年に約100本以上も制作されている。中国で放送されるテレビドラマの70%は戦争がテーマで、ほとんどは抗日戦争を扱ったものだ。

尖閣諸島を巡る日中間の緊張が続いている。愛国主義者の安倍晋三首相が再登場したことで、緊張は一段と高まった。反日が国民に幅広く浸透している中で、中国の習近平国家主席は強硬な態度をとるほか選択肢がないように思える。安全保障で日本と関係が深い米国は、日本側を支持しているように考えられているが、「2カ国問題」として距離を置いている。根は深く、解決の糸口が見えない。

 尖閣問題だけでなく、日本は、韓国との竹島の帰属を巡る摩擦や慰安婦問題、ロシアとの北方領土問題など歴史的な重い問題を数多く抱えている。第二次大戦で負けたドイツにも領土問題などが一部残っているが、成長のため、前進するため、隣国との協調を選んだ。日本は世界の主要国で最も歴史を引きずっている国といっても過言ではない。 

[MAY 31, 2013] No 0105286

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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