2分でわかるアメリカ

2013/05/25「常識シリーズ32」非日本人の成功


日本のテレビドラマや映画の中で登場する資産家の住宅は決まって古い洋館だ。大正期から戦前の昭和期に建てられた西洋風の住宅。広い食卓でフレンチのフルコースを楽しむ。朝も夜も。しかし、こんな日本の資産家は本当に存在するのか。都心の広い高層ビルのマンションや郊外の和風の家に住んでいるのではないか。食事も和食に違いない。

なぜ洋館とフレンチが登場するのか。監督や美術担当の「固定概念」としか考えられない。「お金持ちは洋館に住んでいる」「フレンチは高級」という戦前の政治家や実業家のイメージが抜けきれていない。固定概念を壊さない限り、現実とのギャップは大きくなるばかりだ。

日本の家電メーカーは「固定概念」で失敗した。日本でヒットした技術は海外でも受けるとの固定概念が壊せなかったからだ。

日本の職人が「巧みの技」で微妙な最終調整をしたアナログ時代は海外メーカーが真似できなかった。デジタル時代の日本メーカーのテレビの優位性はない。回路パネルなどを簡単にプリントできるからだ。機能てんこ盛りのテレビは日本では受けるが、海外では必要な機能に絞った製品しか売れない。各地の消費者動向を徹底的に分析した韓国サムスンのテレビと日本人の考えを海外に押しつけるテレビの差は広がるばかり。携帯端末や白物家電も韓国や中国などのメーカー製品が売れに売れている。

 固定概念を押しつけたために海外で失敗した例は他にもある。去年末まで続いた円高を背景に、日本の回転寿司チェーンやラーメン店など飲食のフランチャイズが過去5年相次いで米国西海岸に進出した。いずれも日本のコンセプトをそのまま輸出。全体の1%未満の日本人は喜んだが、米国人には受けなかった。赤字経営が続いている。 

反面、米国西海岸では米国人が経営する高級な日本食レストランが繁盛している。投資グループのIDGは1997年にハリウッドに「Sushi Roku(スシロク)」を開店、カリフォルニア風にアレンジした高級寿司が大ヒット。ラスベガスなど5店舗を展開、さらに居酒屋風の「Robata(ロバタ)」も大成功した。同様に米国人グループが手がける米国風高級寿司「Katsuya(カツヤ)」も予約が取れないぐらい繁盛している。スパイシーなトロをクリスピー・ライスにのせた寿司が人気だ。徹底した市場調査、豊富な資金と明確なビジネス・プランがあり、成功するべくして成功した。

日経ビジネスは、日本食のファースト・フードが欧州大陸、中東、オーストラリアなどに拡大していると伝えた。Wagamama(ワガママ)、 Wasabi (ワサビ)、Yo! Sushi (ヨウ!スシ)、Itsu(イツ)の“ビッグ4”はいずれも日本人の経営ではない。また、いずれもロンドンで創業した。世界が好む日本食と日本人が好きな味、日本人が好むサービスとのギャップは小さくない。

固定概念を捨て、徹底的にローカライズしない限り、家電もレストランも日本人の勝ち目はないことは明らかだ。

[MAY 24, 2013] No 0105281

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

※当レポートに記載する売買戦略はテクニカル指標その他を基に客観的に判断しているものであり、相場の行方を決定付けるものではありません。最終的な投資判断はご自身の意思判断によりお取引いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

NOTE

このレポートは、Market Editors が信頼に値すると判断した情報を基に作成されています。あくまでも情報提供が目的であり、その結果について責任を負うものではありません。投資に関しましては、投資家ご自身の判断に基づき決定してください。無断転載や引用を禁じます。

Market Editors
【データ提供】

PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

バックナンバー

  • 2018.05.26 更新「溶岩の川」、噴火で50%キャンセルメモリアルデーが絡む今週末の連休に、知人がハワイで結婚式をあげます。日本人だけではなく、ハワイで人生の新たな門出を誓うアメリカ人が意外に多い。知人が結婚式の会場…
  • 2018.05.25 更新輸入車25%関税の衝撃トランプ政権は23日、自動車の輸入が安全保障におよぼす影響について調査を開始すると発表しました。予想されていたことですが、それでも世界に衝撃を与えました。アメリ…
  • 2018.05.24 更新微妙な関係、米朝首脳会談と米中貿易協議トランプ大統領は22日、訪米した韓国の文在寅大統領とホワイトハウスで昼食をはさみ2時間にわたり会談しました。北朝鮮の体制維持などで意見を交換したもようです。会談…
  • 2018.05.23 更新「相当な確率でビットコインはゼロに」去年後半から年初にかけて世界を騒がせたビットコイン。一時は2万米ドルまで上昇するとの強気な見方がありましたが、最近では聞きません。低調な取引が続き、8000米ド…
  • 2018.05.22 更新「夜の灯」で景気判断、独裁国はGDP水増し?ワシントンポストに興味深い記事が掲載されました。中国、ロシア、その他の独裁国家がGDPを15〜30%「水増し」していることを衛星写真が強く示唆しているというもの…

「日刊2分でわかるアメリカ(2分でアメリカがわかる)」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ