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2013/05/18「常識シリーズ31」試されるアベノミクス


Activist Investor(物言う株主)として知られるヘッジファンド「サード・ポイント」の創業者ダニエル・ローブ氏が5月14日にソニーに提言した経営改革案は欧米で高い注目を集めた。ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズなどのクオリティ・ペーパーはトップ級で詳しく報じた。

ダニエル氏の提案は、企業分割により赤字体質のエレクトロニクス部門からソニー・ピクチャーズとソニー・ミュージックのエンターテインメント部門を切り離し、米国市場で新規株式上場することが骨子。ソニーの平井社長は「売却は考えていない」と繰り返すが、エンターテインメント部門の分割・上場に関しては否定していない。

「コングロマリット・ディスカウント」という言葉がある。複数の業態を持つ企業は、リスクに対しては強いが、成長性に問題があり企業の株価が低下することをさす経営用語だ。ソニーの場合は、先が見えないエレクトロニクス部門が映画や音楽のビジネスの足かせとなり全体の業績が低迷、株価が安く抑えられている。コングロマリット・ディスカウントの典型と言える。ローブ氏の計算では、ソニーのエンターテインメント部門の企業価値は100億ドル(約1兆円)あるという。

ローブ氏の提言は、コングロマリットのソニーへの経営改革だけでなく、日本企業全体への提言でもある。少なくとも欧米ではそう受け止められている。

提言が公表された前日の5月13日。パイオニアが中期事業計画を発表した。NTTドコモと三菱電機を引受先とする第三者割当増資を実施、合わせて89億円の資金を得るとの計画だ。ウォール・ストリート・ジャーナルは「日本の企業社会では、株式持ち合いで弱いものを潰さない。不採算部門の閉鎖に消極的で、取締役会も独立していない」と冷ややかに伝えた。ジャーナルは「ソニーへの提言は日本を復活させようとするアベノミクスを試すことにもなる」と主張している。一方、フィナンシャル・タイムズは、英国を拠点とするチルドレン・インベストメント・ファンド(TCI)が日本タバコの経営陣と揉めた例を紹介、日本での経験がフラストレーションを呼んでいると伝えた。

欧米の投資家にとって、日本企業は成長できるのに内向きでリスクをとらないため企業価値が低く抑えられていると映る。過去に何度もあった海外ファンドなどの日本企業への経営改革提案について、日本のメディアはネガティブに報じた。しかし、欧米のメディアはネガティブに受け止める日本の企業構造をネガティブに伝える。円高が円安に変わっても、ソニーのエレクトロニクスは、日本の縮図とも言える構造的な問題は変わらない。

 世界に最も認知された日本企業の1つであるソニーへの提言は敵対的な買収ではなく、企業価値を高めるための選択肢のひとつと言える。日本社会がどう受け止め、ソニーの経営陣がどう対応するか、日本企業の将来に影響するといっても過言ではない。 

[MAY 17, 2013] No 0105276

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PROFILE

松島 新(まつしま あらた)氏

執筆者

昭和60年慶大卒後、テレビ東京入社。
ブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長、「ワールド・ビジネス・サテライト」担当。
平成13年ソニー入社後、CEO室、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカのバイスプレジデントなど歴任。
現在、金融情報サービス会社Market Editorsにて、エグゼクティブエディター(ジャーナリスト)として情報提供に携わる。ロサンゼルス在住。

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